更新日: 2018年10月23日

大門通り・万葉の歌パネル

設置の経緯について

私たちが暮らす市川市は、万葉集にも詠われる豊かな文化や歴史を持った土地です。
 
この「大門通り・万葉の歌パネル」は、これまで大門通り沿いの壁面に設置されていた、市川にゆかりを持つ書家の方々による「万葉集の和歌」を題材とした書画を前身とし、これを平成20年9月5日に真間山弘法寺よりご寄贈を受けた市川市が改修した後、地域の方々のご厚意によって再設置したものとなります。
 
ここでは、大門通りの入口側から順番に、それぞれの歌の現代語訳を紹介していますが、更にこの周囲には、万葉集に詠われた草花を描いた路面サインが、計8箇所に設置されています。
 
書家の手による「書の迫力」に触れながら、かつてこの場所が詠われた「いにしえ」の時代に思いをはせて、実は身近な「万葉の花木」を探して歩いて見ませんか?

※パネルの設置状況は2015年8月現在です
 
 

(1)葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも

現代語訳:
葛飾の真間の浦の廻りを漕ぐ船の船人たちが騒いでいる。波が立っているらしい。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:中野花舟
歌番号:巻14-3349番歌

※現在、掲示しておりません
 
 

(2)葛飾の真間の入江にうちなびく玉藻刈りけむ手児名し思ほゆ

現代語訳:
葛飾の真間の入江になびいている玉藻を刈ったであろう手児名のことが思われる。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:和爾啓水
歌番号:巻3-433番歌
 
※現在、掲示しておりません 

(3)葛飾の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ

現代語訳:
葛飾の真間の井を見ると、立ちならして水を汲んだであろう手児名が偲ばれる。
 
歌詠み人:高橋虫麻呂
揮毫者:大貫水聲
歌番号:巻9-1808番歌
 
 ※現在、掲示しておりません

(4)世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ

現代語訳:
いつもの声として聞いていると厭になる呼子鳥だが、それが懐かしくなる季節になった。
 
歌詠み人:大伴坂上郎女
揮毫者:和爾渓珠
歌番号:巻8-1447番歌
 
※現在、掲示しておりません

(5)我がやどの冬木の上に降る雪を梅の花かとうち見つるかも

現代語訳:
我が庭の冬木の上に降る雪を、梅の花かとつい見まちがえた。
 
歌詠み人:巨勢朝臣宿奈麻呂
揮毫者:福島暎花
歌番号:巻8-1645番歌
 
 

(6)験なきものを思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし

現代語訳:
何の甲斐もない物思いをするくらいなら、一杯の濁り酒を飲むべきであるらしい。
 
 
歌詠み人:大伴旅人卿
揮毫者:桜井映乙子
歌番号:巻3-338番歌
 
※現在、掲示しておりません

(7)田子の浦ゆうち出でて見ればま白にそ富士の高嶺に雪は降りける

現代語訳:
田子の浦から眺望の良い地点に出て見はるかすと、真っ白に富士の高嶺に雪は降り積もっている。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:吉澤桃舟
歌番号:巻3-318番歌
 
 

(8)にほ鳥の葛飾早稲を贄すともそのかなしきを外に立てめやも

現代語訳:
(にほ鳥の)葛飾早稲の稲を神に供える時でも、そのいとしい人を家の外に立たせなどするものですか。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:松田青艸
歌番号:巻14-3386番歌
 
 

(9)我も見つ人にも告げむ葛飾の真間の手児名が奥つ城処

現代語訳:
私も確かに見た。人にも知らせよう。葛飾の真間の手児名の墳墓の地を。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:嶋田桃翠
歌番号:巻3-432番歌
 
 

(10)いはばしる垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも

現代語訳:
岩の上にほとばしり落ちる滝のそばのさわらびが芽を出す春になったのだなあ。
 
歌詠み人:志貴皇子
揮毫者:宇田川流芳
歌番号:巻8-1418番歌
 
 

(11)熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

現代語訳:
熟田津で船に乗り込もうと、月の出を待っていると、潮も満ちて船出に都合よくなってきた、さあ、今こそ漕ぎ出ようではないか。
 
歌詠み人:額田王
揮毫者:那須大卿
歌番号:巻1-8番歌
 

 

(12)あをによし奈良の都は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり

現代語訳:
(あをによし)奈良の都は咲く花の美しく薫るように、今がまっ盛りである。
 
歌詠み人:小野老朝臣
揮毫者:中野花舟
歌番号:巻3-328番歌
 
 

(13)若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る

現代語訳:
若の浦に潮が満ちてくると、干潟がないので、葦辺をめざして鶴の群れが鳴き渡る。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:平井万寿
歌番号:巻6-919番歌
 
 

(14)君待つと我が恋ひをれば我がやどの簾動かし秋の風吹く

現代語訳:
あなたのおいでを御待ちして、恋しい思いをしていると、私の家の簾を動かして、秋の風が吹きます。
 
歌詠み人:額田王
揮毫者:小澤潮園
歌番号:巻4-488番歌
 
 

(15)なつきにし奈良の都の荒れ行けば出で立つごとに嘆きし増さる

現代語訳:
慣れ親しんだ奈良の都が荒れて行くので、外に出て見るたびに嘆きが増すばかりである。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:国井久美子
歌番号:巻6-1049番歌
 
 

(16)銀も金も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも

現代語訳:
銀も、金も、珠玉も、どうしてすばらしい宝の、子どもに及ぶだろうか。
 
歌詠み人:山上憶良
揮毫者:岩田荷渓
歌番号:巻5-803番歌
 
 

(17)近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ

現代語訳:
近江の海の夕波千鳥よ、おまえが鳴くと心も萎えるばかりに過ぎし日々が思い出される。
 
歌詠み人:柿本人麻呂
揮毫者:小林松篁
歌番号:巻3-266番歌
 
 

(18)霞立つ野の上の方に行きしかばうぐひす鳴きつ春になるらし

現代語訳:
霞のたつ野原の上の方に行ってみたら、鶯が鳴いたよ。春になるらしい。
 
歌詠み人:丹比真人乙麻呂
揮毫者:川渕如水
歌番号:巻8-1443番歌
 
 

(19)春の野にすみれ摘みにと来し我そ野をなつかしみ一夜寝にける

現代語訳:
春の野にすみれを摘むために来た私は、野に心を引かれて、そこで一夜宿った。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:樋口晶子
歌番号:巻8-1424番歌
 
 

(20)霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見つ

現代語訳:
霜雪もまだ消えていないのに、思いがけず、春日の里に梅の花を見た。
 
歌詠み人:大伴宿禰三林
揮毫者:道口和羊
歌番号:巻8-1434番歌
 
 

(21)ぬばたまの夜のふけゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く

現代語訳:
(ぬばたまの)夜が更けて行くと、久木の生えている清い川原に千鳥がしきりに鳴いている。
 
歌詠み人:山部宿禰赤人
揮毫者:豊住美枝
歌番号:巻6-925番歌
 
 

(22)葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも

現代語訳:
葛飾の真間の浦の廻りを漕ぐ船の船人たちが騒いでいる。波が立っているらしい。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:小林松篁
歌番号:巻14-3349番歌
 
 

(22)葛飾の真間の手児名をまことかも我に寄すとふ真間の手児名を

現代語訳:
葛飾の真間の手児名を、本当かな、私とわけがありそうだと人が言うのは。真間の手児名を。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:小林松篁
歌番号:巻14-3384番歌
 
 

(22)葛飾の真間の手児名がありしかば真間のおすひに波もとどろに

現代語訳:
葛飾の真間の手児名がいたので、真間の磯辺に波も轟くほどに言い騒いだものだ。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:小林松篁
歌番号:巻14-3385番歌
 
 

(22)足の音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ

現代語訳:
足音を立てずに進む馬がいないものかなあ。葛飾の真間の継橋をいつも通おうものを。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:小林松篁
歌番号:巻14-3387番歌
 
 

(23)恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩花咲きにけり

現代語訳:
恋しかったら形見にして偲べと、我が夫が植えた秋萩は花が咲きました。
 
歌詠み人:不詳
揮毫者:松坂久子
歌番号:巻10-2119番歌
 
 

(24)葦辺行く鴨の羽がひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ

現代語訳:
葦辺を泳ぐ鴨の翼の重ね目に霜が降って、この寒い夜は大和のことが思われる。
 
歌詠み人:志貴皇子
揮毫者:宇田川芳舟
歌番号:巻1-64番歌
 
 

(25)君待つと我が恋ひをれば我がやどの簾動かし秋の風吹く

現代語訳:
あなたのおいでを御待ちして、恋しい思いをしていると、私の家の簾を動かして、秋の風が吹きます。
 
歌詠み人:額田王
揮毫者:国井久美子
歌番号:巻4-488番歌
 
 

(26)苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに

現代語訳:
苦しいことに雨が降ってくるよ。三輪の崎の狭野の渡し場に我が家もないのに。
 
歌詠み人:長忌寸奥麻呂
揮毫者:今井澄水
歌番号:巻3-265番歌
 
 

引用

現代仮名遣いの表記、現代語訳、歌番号については、『新日本古典文学大系』(岩波書店)より引用させて頂きました。

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