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おかあさん

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更新日: 2008年5月4日

脚本=水木洋子 製作=永島一朗 監督=成瀬巳喜男(1952年 新東宝映画 モノクロ 98分)

解説
 「森永母を讃える会」主催、文部省・厚生省後援「母を主題にした綴方」応募作品集『全国児童綴方集』より、水木洋子が脚本を書き、成瀬巳喜男が庶民の日常を温かく描いた秀作。
 水木洋子はこの作品でシナリオ作家協会シナリオ賞、映画サークル東海地方協議会の日本映画功労賞・脚本賞を初めて受賞した。1952年キネマ旬報第7位。フランスで現在も評価の高い作品。

物語
 「私のお母さんは少し小っちゃくて、長い箒が大嫌いです」という娘年子のナレーションで始まる。父と母、兄進、妹久子、従弟の哲夫の家族。父と母は苦労してクリーニング店を開店する。父の友人でハバロフスクで捕虜になっていた庄吉おじさんも働くようになる。
 そのうちお父さんが亡くなる。お母さんはお父さんのかわりに重いアイロンを動かして働く。妹の久子を叔父さんの家に預ける。哲夫の母は美容師で、その着付けのモデルとして年子は花嫁衣裳を着る。パン屋の息子信ちゃんはそれを見て驚く。庄吉おじさんも他に行き、おかあさんは哲夫と相撲をとっている。「私の大好きなおかあさん・・・仕合せですか。」

水木洋子と成瀬巳喜男

成瀬巳喜男「映画作家のペース」
「脚本が出来てから受取りました。作文集とはいうものの、まァ水木さんのオリジナルね。これは僕にとって一番わかりやすい世界だから・・・」
(『キネマ旬報』1960年12月増刊号より)

水木洋子「追悼・成瀬巳喜男 日本的感性」
 成瀬さんとは『おかあさん』で始めて会ったが、勝手に書いたオリジナルを持って、新東宝で撮影中のところへ永島一朗プロジューサーにつれられて行った。そこで読んで、すぐ印刷にまわせと言われた時、プロジューサーは≠「いんですかと念を押していた。・・・
 特に『浮雲』の時は、正面から成瀬さんと互角に対向した。それがよかった。・・・≠れは僕の作品ではないと後日、口ぐせのように『浮雲』のことをいう。
≠なたは『浮雲』が好きなんでしょうというと≠ワさにそうだとうなずかれるのである。 私は成瀬さんから学びとるものが沢山あるように思えた。ハッタリ、スタンドプレー、気張り、というものを全くすてて、自然に、さりげなく語る姿勢の中からピカリ、ピカリと鋭い感覚が閃き、人生の深い哀歓をにじませる映像の美しさは、全く才能のすぐれたもののみの技である。・・・

(『シナリオ』1969年9月号より)

  キャスト
福原正子・・ 田中 絹代
  良作・・ 三島 雅夫
  進・・・ 片山 明彦
  年子・・ 香川 京子
  久子・・ 榎並 啓子
福原こよ・・ 一の宮あつ子
栗原則子・・ 中北千枝子
  哲夫・・ 伊東 隆
平井信二郎・ 岡田 英次
  信造・・ 中村 是好
  みの・・ 本間 文子
木村庄吉・・ 加東 大介
おせい・・・ 沢村 貞子

撮影:鈴木 博
照明:佐藤 快哉
録音:中井 喜八郎
美術:加藤 雅俊
音楽:斎藤 一郎

水木洋子脚本の成瀬巳喜男監督映画

水木洋子脚本の成瀬巳喜男監督映画
1952年「おかあさん」全国児童綴方集より 主演:田中絹代・香川京子(新東宝)
1953年「夫婦」井手俊郎共作 主演:上原 謙・杉 葉子・三国連太郎(東宝)
1953年「あにいもうと」室生犀星原作 主演:京 マチ子・森 雅之(大映)
1954年「山の音」川端康成原作 主演:上原 謙・原 節子・山村 聡(東宝)
1955年「浮雲」林 芙美子原作 主演:高峰秀子・森 雅之(東宝)
1956年「驟雨」岸田国士原作 主演:原 節子・佐野周二・香川京子(東宝)
1957年「あらくれ」徳田秋声原作 主演:高峰秀子・上原 謙・森 雅之(東宝)

香川京子さんのトークと映画「おかあさん」の鑑賞会

香川京子さんと水木洋子

 『おかあさん』に出演した時は、ただただ楽しく、言われるままにやっていたんですけど、私はひょっとするとこういう役柄をやるのがいいんじゃないかなって思ったんです。何本か映画には出ていましたけれど、初めて女優として意識しました。
(『成瀬巳喜男演出術―役者が語る演技の現場―』ワイズ出版 1997年)

当時、映画界入りして間もない私は、その悲劇的な「ひめゆり学徒隊」の生徒の一人を演じました。・・・この映画に出演することによって初めて、沖縄のことだけでなく、当時の自分とそう年齢のちがわない女子生徒たちの悲劇を知り、また戦争の恐ろしさについて間接的ながら、知る事ができました。・・・以来、沖縄は、私にとって特別な意味をもつところになり、それがいまも続いているのです。

香川京子著『ひめゆりたちの祈り』朝日新聞社 1992年

香川京子さんの叔母旧姓野川不二子さんは香川さんのマネージャーだった永島一朗氏の夫人であり、水木洋子の友人でもあった。夫人から送られた水木洋子と香川京子さんの写った写真が、水木資料の中にあった。

香川京子さん経歴

香川京子さん
東京都出身。都立第十高女(現・豊島高校)卒業後、新東宝に入社。
1950年、島耕二監督の『窓から飛び出せ』で映画界にデビュー後、成瀬巳喜男監督の『おかあさん』(52)、今井正監督の『ひめゆりの塔』(53)、小津安二郎監督の『東京物語』(53)、溝口健二監督の『近松物語』(54)、成瀬巳喜男監督の『驟雨』(56)、熊井啓監督の『深い河』(95)など数多くの名作に出演している。
 黒沢明監督の作品では『どん底』(57)、『悪い奴ほどよく眠る』(60)、『赤ひげ』(65)、『まあだだよ』(93)に出演。
 90年、熊井啓監督の『式部物語』でキネマ旬報助演女優賞、日本映画批評家大賞、『まあだだよ』で田中絹代賞、日本アカデミー最優秀助演女優賞などを受賞した。
 テレビドラマや舞台の経歴も長く、水木作品ではNTV『おとうと』(58年6月)がある。宮尾登美子原作のNHKの連続ドラマ『蔵』(96)、NHK朝のテレビ小説『ふたりっ子』(96〜97)、TBS東芝日曜劇場『オトナの男』(97)、NHKの連続ドラマ『一絃の琴』(2000)などに出演した。
 その後、映画『阿弥陀堂だより』、NHK金曜時代劇『はんなり菊太郎』に出演している。
 98年秋、紫綬褒章、2004年秋、旭日小綬章を受章。
 著書に『ひめゆりたちの祈り』(92年、朝日新聞社刊)がある。
赤字:水木洋子脚本作品
会場風景
展示風景
香川さんとサポーター
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