更新日: 2019年2月18日

市川市文化振興ビジョン全文

目次構成

第1章 文化振興ビジョンの趣旨
1-1 ビジョン策定の背景と目的
1-2 ビジョンの性格

第2章 文化振興の基本的な考え方と目標
2-1 文化に関する基本的な考え方
2-2 文化振興の基本的な課題
2-3 文化振興の基本的な視点
2-4 文化振興の目標

第3章 文化振興の基本方針と基本方策
3-1 地域を彩る文化資源の保全・活用
3-2 文化活動の拠点と回遊ルートの整備
3-3 豊かな心を育む文化活動の支援
3-4 文化情報の発信と文化交流の促進
3-5 魅力を高め交流を深める街づくりの推進

第4章 文化振興の推進体制の整備
4-1 市民と事業者と市の協働体制の整備
4-2 文化行政の推進体制の整備
4-3 市川市文化振興財団の機能の拡充

リーディングプログラム~「街かどミュージアム都市づくり」の展開
(1)民間の「街かどミュージアム」の登録の推進
(2)「街回遊展」の全市的な展開
(3)地域の「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」策定の推進
(4)「街かどミュージアム」の拠点と情報ネットワークの整備

第1章 文化振興ビジョンの趣旨

1-1 ビジョン策定の背景と目的

近年、社会状況が大きく変化する中で、文化の振興はますます重要なものとなってきています。
市川は、江戸川のゆったりとした流れと貴重な斜面林の緑、閑静な住宅地に点在する黒松など、水と緑が織りなす自然環境の中で、古くから文化と芸術の土壌が育まれてきました。
市政においても、「文化都市」の実現を目標とし、文化振興に係る各種施策・事業を進めてきました。
今後は、これらを活かして市民の文化活動のさらなる促進を図るとともに、「文化都市」にふさわしいまちづくりを計画的かつ体系的に進めていくことが求められています。
そこで、市民と事業者と市が協働して取り組む文化振興の目標や基本方針などを明らかにするため、ここに「市川市文化振興ビジョン」を策定しました。


(文化振興の重要性)
・今日の社会状況は、価値観の多様化、少子・高齢化、国際化、高度情報化等の変化が急速に進む中、人間性の回復や次代を担う子どもの育成、地域社会の多様化などが問われており、人々の精神生活及び社会を支える基盤でもある文化の振興はますます重要なものとなっています。
・近年、企業の社会貢献意識の高まりに加えて、経済の発展には文化の側面が不可欠との認識が強まっていることを背景に、自ら芸術・文化事業を実施したり、芸術・文化活動を支援するなど、民間企業等によるメセナ活動が活発化しています。また、国の文化予算は増え続けており、これらをさらに推進していくために、先般「文化芸術振興基本法」が施行されたところです。

(市川の文化の土壌と歴史)
・市川の文化や芸術の土壌は、江戸川や東京湾、斜面林、黒松など、水と緑が織りなす自然環境の中で育まれてきました。
・先史時代から人々の生活が営まれてきた歴史を物語る文化財や景観に深い味わいをもたらす歴史的建造物が市内各地に残されています。戦前から首都圏有数の郊外住宅地として発展したこともあり、多くの文化人が市川を拠点として創作活動を展開してきました。
・また、他市に先駆けて芸術文化団体協議会が設立され、学校と地域が連携した活動が全市的に進められるなど、早くから市民が主体となった文化活動が活発に行われてきました。

(市政における文化振興の取り組み)
・本市は、「文化都市」の実現を究極の目標と定め、文化振興に係る各種施策・事業を進めてきました。特に近年は、「街回遊展」を市民と行政との協働で進めるなど、市川の文化資源を活用し、より積極的に市民の文化活動の支援や文化的なまちづくりに取り組んできました。
・平成12(2000)年12月に策定した「市川市基本構想」においては、「ともに築く 自然とやさしさがあふれる 文化のまち いちかわ」を将来都市像に掲げ、「彩り豊かな文化と芸術を育むまち」をまちづくりの基本目標の5本柱のひとつに位置づけるとともに、平成14(2002)年4月には「文化部」を組織し、これからの行政運営を進めていく上で、文化的要素を十分に取り込んでいこうとする市の積極的な姿勢を示したところです。
・今後は、より一層市民が主体となり、市民と事業者(民間企業、財団法人、NPO等の各種法人、団体等)と市がそれぞれの役割を担い、相互に連携する体制を整え、「文化都市」にふさわしいまちづくりを計画的かつ体系的に進めていくことが求められています。

(文化振興ビジョン策定の目的)
・そこで、市民と事業者と市が協働して取り組む文化振興の目標や基本方針などを明らかにするため、「市川市文化振興ビジョン」を策定しました。具体的には、次の点を明らかにします。
[1]文化振興の基本的な考え方と目標
[2]文化振興の基本方針と基本方策の体系
[3]文化振興の推進体制
[4]文化振興の推進方策(リーディングプログラム)

 

1-2 ビジョンの性格

・このビジョンは、「市川市基本構想」を上位計画とし、2025年度を目標年次とする文化振興に係る中長期的プランとして位置づけます。
・また、それを実現する方策や体制を示し、市民と事業者と市の連携による個性ある地域づくり及び文化行政を進める上での指針とします。


(ビジョンの位置づけ)
・「市川市文化振興ビジョン」は、幅広い視野から市民の文化活動を支援するとともに、「文化都市」にふさわしいまちづくりを計画的かつ体系的に進めていくために、平成12(2000)年12月に策定した「市川市基本構想」を上位計画とします。
・従って、目標年次は「市川市基本構想」と同じ2025年度とし、まちづくりの基本目標の5本柱のひとつの「彩り豊かな文化と芸術を育むまち」を実現する中長期的プランとして位置づけます。

(ビジョンの性格)
・「市川市文化振興ビジョン」は、文化振興の考え方や目標などを示した理念的な構想だけでなく、それを実現する基本方策、推進体制、リーディングプログラムを示すことにより、次の2つの指針となる性格を持っています。
[1]市民が主体となり、市及び事業者との連携により、個性的な地域づくりを進める上での指針
[2]本市の行政組織及び行政施策に文化的な視点を加え、文化行政を進める上での指針

(リーディングプログラムの性格)
・「リーディングプログラム」は、「文化振興ビジョン」に係る施策をリード(牽引)するプログラムであり、「街かどミュージアム都市づくり」を展開するものです。
・地域固有の魅力をまちづくりに活かしていくための文化的な活動の場を「街かどミュージアム」として位置づけ、それらをつなげていくプログラムです。

第2章 文化振興の基本的な考え方と目標

2-1 文化に関する基本的な考え方

・文化は、私たち一人ひとりの価値観から経済活動まで、暮らし方の全てを含みます。それらの総体は「まちの文化」として表れています。
・「まちの文化」の中心をなす芸術は、私たちの生活にゆとりや安らぎをもたらし、人生を豊かにし、文化振興を牽引する役割を担っています。
・地域の文化資源や地域に根ざした文化活動等は、それ自体が固有の価値を持つだけでなく、地域への誇りや愛着を深め、「まちの文化」として住民共通のよりどころとなります。


(文化の機能と表出)
・文化は、人として生きるあかしであり、創造的な営みの中で自己の可能性を追求する人間の根元的な欲求であります。また、文化は、人々の心のつながりや相互に理解尊重しあう土壌を提供するものであり、心豊かなコミュニティを形成し、地域社会全体の心のよりどころとなるものです。さらに、文化のあり方は、経済活動にも多大な影響を与え、知的集約産業として多くの雇用の創出が期待されています。
・このように、文化は、私たち一人ひとりの価値観や生活様式から経済活動まで、生き方や暮らし方の全てを含みます。芸術、伝統文化、さらには食文化もそのうちのひとつです。
・それらの総体は、各地の様々な地域活動や都市環境等に投影され、「まちの文化」として表れています。
・ただし、文化は、何もせずに育つものでなく、手を加えないと成立しないものであることから、振興の必要が求められています。

(芸術の役割)
・芸術は、人々の創造性を育み、その表現力を高めるとともに、私たちの生活にゆとりや安らぎをもたらし、人生を豊かにします。
・芸術には、美術、音楽、文学、演劇、建築等、様々な分野がありますが、それらは「まちの文化」の中心をなし、文化振興を牽引する役割を担っています。

(文化資源や文化活動の意味)
・地域において昔から親しまれている祭りや行事、史跡や有形無形の文化財、歴史的建造物、地域に根ざした文化活動等は、それ自体が固有の価値を持つだけでなく、地域への誇りや愛着を深め、「まちの文化」として住民共通のよりどころとなります。
・市内の各地域において、地域の文化資源を活用し、多様な文化活動が行われることは、個性的な地域づくりを進めるだけではなく、市川全体の文化を豊かにし、それが市民共通のよりどころにもなります。

 

2-2 文化振興の基本的な課題

・市内には、それぞれの地域において、自然や歴史、そこで暮らす人々の生活等を反映した「まちの文化」が見られ、地域に根ざした文化振興が求められています。
・そのためには、地域を彩る豊かな文化資源のストックを活用するとともに、地域に根ざした文化活動の促進、うるおいとゆとりのある市街地の形成が基本的な課題となっています。


(市川の「まちの文化」)
・本市は、文化施設や文化情報等が集中する大都市・東京に隣接していることから、文化活動についても東京に依存してきた面は否定できませんが、それぞれの地域において、自然や歴史、そこで暮らす人々の生活等を反映した「まちの文化」が見られ、地域に根ざした文化振興が求められています。
・市川砂洲や江戸川の自然堤防等に形成された真間・八幡・中山地域及び旧行徳街道沿道地域には、神社・仏閣等の名所・旧跡が多く、その辺りにゆかりの深い文学作品などが数多くあり、黒松や歴史的建造物等の歴史的な文化資源を活用した魅力あるまちづくりが求められています。
・市の北部に広がる台地や谷津等に形成された大町・大野・曽谷・国分等の各地域には、貝塚や下総国分寺跡等の史跡や個性豊かな博物館等が数多くあり、首都圏の中でも貴重な農地や屋敷林等の文化資源を活用した緑あふれるまちづくりが求められています。
・市の南部で耕地整理・土地区画整理等により形成された総武線以南地域や行徳地域には、文化会館やメディアパーク市川等の拠点的な文化施設や近隣公園、商業施設が集積しており、これらの文化資源を活用した快適なまちづくりが求められています。
・臨海部の埋立地に形成された工業地域等においては、その周辺に三番瀬の生態系や野鳥の楽園等の文化資源があり、これらを活用し、内陸と海を結ぶ新たな顔づくりや新産業の創出等によるまちづくりが求められています。

(文化振興の基本的な課題)
・本市においては、地域を彩る豊かな文化資源のストックを活用するとともに、地域に根ざした文化活動の推進等、これまでの取り組みを最大限に活かすことが求められています。
・特に、個性豊かな文化施設のネットワーク化、子どもや障がい者の文化活動に係る人材の育成等に力を入れていくことが課題となっています。
・さらには、道路や公園、下水道等の都市基盤の整備、「文化都市」にふさわしい景観形成等、うるおいとゆとりのある市街地の形成が基本的な課題となっています。
・加えて、右肩上がりの経済成長が終焉し、本市においても、少子高齢社会や環境問題、高度情報化への幅広い対応、効率的で効果的な行財政運営が求められています。

 

2-3 文化振興の基本的な視点

・文化振興にあたっては、市民の発意を尊重するとともに、誰もが等しく文化活動に参加できるような環境を整える必要があります。
・また、地域を重視し、様々な文化資源を有効に活用するとともに、教育、福祉、商工業、街づくり等の様々な分野の取り組みと連携し、都市としての基盤を整え、都市の質を総合的に高めていく必要があります。


(市民一人ひとりを主役とした文化振興)
・市民一人ひとりが文化の主役です。文化振興にあたっては、市民の自主性と創造性を十分に尊重し、その能力が十分に発揮できるように考慮する必要があります。
・また、文化を創造し、享受することが市民の生まれながらの権利であることに鑑み、誰もが等しく、文化活動を鑑賞、参加、創造することができるような環境を整える必要があります。

(地域の重視とストックの活用による文化振興)
・文化振興にあたっては、個性ある地域づくりを進める観点から、従来にも増して地域を重視した文化振興の取り組みを進めていく必要があります。
・また、持続可能な地域づくりの観点から、地域の文化資源のストックを有効に活用し、それらのネットワークを形成するとともに、将来にわたってストックになるような文化的な資産を創り出していくことも大切です。

(都市基盤の整備と総合的な施策の展開)
・さらには、道路や公園、下水道等の都市基盤の整備を進め、「文化都市」として総合的な質を高めていく必要があります。
・そのためには、教育、福祉、商工業、街づくり(市街地整備)等の各種行政施策との連携を強化するとともに、それらに文化の視点を盛り込む必要があります。

 

2-4 文化振興の目標

・本市は、彩り豊かな文化と芸術を育む「文化都市」の実現をめざします。
・それは、都市としての質が高く、市民一人ひとりが市川に暮らすことに誇りと愛着を感じることのできる都市です。
・「文化都市」の実現に向けて、地域の文化資源や文化活動の場の活用と整備を図るとともに、文化活動の支援や文化情報の発信、魅力を高め交流を深める街づくりなどを進めます。


(「文化都市」とは)
・本市は、昭和61年度に定めた総合計画において「文化都市」を究極の目標と定めました。先般新たに策定した新総合計画においても「ともに築く 自然とやさしさがあふれる 文化のまち いちかわ」を将来の都市像に掲げたところです。こうしたことから、本市の文化振興の目標は、「文化都市」の実現におきます。
・ここでいう「文化都市」とは、新総合計画にもあるように、「彩り豊かな文化と芸術を育む」都市であり、芸術だけにとどまらず、生涯学習や男女共同参画、景観形成等を含め、都市としての質が総合的に高い都市の実現をめざします。いいかえれば、市民一人ひとりが市川に暮らすことに誇りと愛着を感じることのできる都市の実現をめざします。

(「文化都市」の実現に向けて)
・「文化都市」の実現に向けて、地域の文化資源や固有の魅力を掘りおこし、文化活動の場の活用と整備を図りながら、豊かな心を育む文化活動を支え合います。
・また、様々な情報媒体を活用し、市川の文化情報を内外に発信するとともに、魅力を高め交流を深める「文化都市」にふさわしい街づくりなどを進めます。

第3章 文化振興の基本方針と基本方策

3-1 地域を彩る文化資源の保全・活用

【基本方針】
・文化財はもとより、市内各地で育まれてきた伝統文化や自然環境、歴史的資産を保全するとともに、身近な地域における施設や人材、活動など様々な文化資源を発掘・再評価し、それらの積極的な活用を図ります。

(1)文化財等の保存・継承・活用

・埋蔵文化財の発掘調査及び歴史的な価値の高い建築物等の文化財登録を進めるとともに、史跡等の文化財、地域の伝統文化、民俗文化等を計画的に保存・継承し、それらの活用を図ります。

・縄文時代以来の貴重な埋蔵文化財の発掘調査を進めるとともに、曽谷貝塚、下総国分尼寺跡等の史跡の公有地化を進め、それらを含む地域において自然環境も合わせた保存・活用を図り、歴史的な潤いのある環境整備を進めます。
・古い民家や近代建築等、地域において歴史的な価値の高い建築物等の文化財の指定及び登録を進めるとともに、文化財案内板や遺跡発掘成果の解説板の設置の充実、市民参加の文化財巡りによる文化財等の周知・普及を進めます。
・指定及び登録文化財はもとより、地域の文化を伝える建造物の活用を図ります。
・地域に根付き、地域で育まれてきた伝統文化や民俗文化等を保存・継承するとともに、それらに係る人材の育成や発表の機会の充実を図ります。
・地域に根付き、地域で育まれてきた祭礼等の伝統的な行事等の実施を支援するとともに、「街回遊展」をはじめとした各種イベントにおいて史跡等の文化財、伝統芸能等の公開を進めます。
・考古博物館、歴史博物館においては、文化的な資産に関する各種情報・資料を体系化し、市民が文化的な資産を共有できる学習の場となるよう整備を図るとともに、各地域において郷土の歴史・文化を学習できる場と機会の拡充を図ります。


(2)自然環境の保全・活用・再生
・黒松、斜面林、巨木、屋敷林等の緑地環境、東京湾や江戸川、真間川等の水辺環境を保全するとともに、農地や遊水池等を含めそれらの活用を進めつつ、緑地や水辺の回復、水質の改善等を図ります。

・黒松、巨木、屋敷林等の緑地環境については、地理情報システム(GIS)等を活用し、それらのデータベースの作成を進めるとともに、都市計画決定された都市緑地の公有地化、斜面林の景観保全の推進を図ります。
・三番瀬、江戸川、真間川、遊水池等の水辺環境については、それらを活用した各種イベントの開催を進めます。特に、真間川水系については、北東部等における湧水の保全・蘇生、農地や休耕田の活用等により、水質と水量の確保を図り、小川の再生を進めます。

・自然環境に関する各種情報・資料を体系化し、市民がそれらを共有できる学習の場となるよう整備を図るとともに、各地域において学習できる場と機会の拡充を図ります。
・小中学校の「総合的な学習の時間」等を活用して、自然保護に関する普及・啓発を図るとともに、歴史的に培われてきた環境に優しい建築文化の普及・啓発を図ります。


(3)身近な地域の文化資源の発掘・再評価・活用
・身近な地域における文化施設や景観上重要な建築、芸術や伝統文化等に係る人材、文化振興に係る各種活動を発掘・再評価するとともに、それらのデータベースを作成し、積極的な活用を図ります。

・身近な地域における各種文化施設や景観上重要な建築、芸術や伝統文化等の文化資源を発掘・再評価するワークショップ等を開催し、身近な文化資源に係る関心を高めるとともに、それらの活用を図ります。
・市が所有する美術品や歴史資料、地域文化等のデータベースの作成、映像資料等の整備を進めるとともに、市民が気軽に鑑賞、学習できる機会とシステムの整備を進めます。
・市民や民間事業者等が所有又は管理する施設等のうち、地域の文化資源として価値のある施設については、そのデータベースを作成・共有し、以てそれらの活用を進めます。
・中央図書館等において文化振興に係る人材や各種活動のデータベースの作成を進めるとともに、それらの積極的な活用を図ります。

 

3-2 文化活動の拠点と回遊ルートの整備

【基本方針】
・既存の文化施設及び市に寄贈された民家等の施設整備、民間の文化施設及び公民館や学校施設等の各種公共施設の有効活用により、地域における文化活動の拠点を確保するとともに、それらと地域の文化資源を歩いて回るルートの整備を図ります。

(1)既存施設、寄贈民家等を活用した拠点整備

・文化会館、各博物館、中央図書館等は、市全体の文化施設の拠点として、より一層市民のニーズを反映した運営と施設整備を図るとともに、市に寄贈された民家、公園施設等を活用し、文化活動の拠点の整備を進めます。

・文化会館や各博物館をはじめ各種文化施設の自主事業を進めるとともに、共催事業における市民団体との連携を進めます。
・考古・歴史・自然博物館等においては、館内活動だけにとどまらず、今まで以上に積極的に館外活動を展開し、地域活動と連携した博物館活動を進めます。
・文化会館、各博物館、中央図書館、公民館等においては、長期的な視点に立ち、施設・設備の計画的な改修整備を進めます。
・市民及び事業者等の協力を得て、旧片桐邸等、市に寄贈された民家等の文化的な活用を進めます。
・新たな芸術活動、文化活動の拠点として、旧芳澤邸を活用したギャラリーや東山魁夷記念館等の整備を進めます。
・紫烟草舎、万葉植物園、登龍庵等、特色ある公園施設の活用を進めます。


(2)民間施設、各種公共施設を活用した文化活動の場の確保
・民間の文化施設、公民館や学校施設等の有効活用を進め、地域における文化活動の場の確保を進めます。

・民間の文化施設の所在・内容等に関するデータベース等を作成し、それらの活用を進めます。
・商店街における空き店鋪等、地域における遊休資源を活用した文化創造の場と機会の確保を進めます。
・公民館等における利用時間や利用内容等について弾力的な施設運営、施設利用の推進を図ります。
・学校施設等において、地域住民等による作品の製作、練習、発表等、文化活動に係る活用を進めるとともに、必要に応じて施設・設備の整備を図ります。
・民間及び公共の文化施設を活用した「街回遊展」等、地域に根ざした文化イベントの開催を進めます。


(3)文化活動の拠点を結ぶ回遊ルートの整備
・地域の文化施設や地域の個性を形成する緑や水辺、旧跡などを結ぶ道筋について、まちあるきマップや地域住民によるガイドシステムの構築、効果的な案内板やサインの改善、沿道景観の向上等により、歩いて楽しい道づくりの整備を図ります。

・鉄道駅を拠点に地域の文化施設や緑地、水辺、旧跡等を回遊するルートを検討し、商店街等と連携したまちあるきマップづくりを進めます。
・回遊ルートについては、歩道のサインや「まち案内板」の整備や、沿道景観の向上等の取り組みを進めます。
・回遊ルートの整備にあたっては、市川の歴史や文化に親しむことのできる特色ある路線を検討し、道路や沿道景観等の整備を進め、歩いて楽しい道づくりの整備を図ります。
・市内各所の文化的な資産を案内する市民ボランティアの育成、確保を図ります。


(4)歩いて回れる総合的な交通計画の推進
・各地域の文化活動拠点への交通手段は、徒歩、自転車及び公共交通機関を基本とし、レンタサイクルや地区単位の駐車場、巡回バスの導入等により、総合的な交通計画を進めます。

・鉄道駅等の交通拠点においてレンタサイクルを設置するなどして、公共交通機関や自転車の利用を進めます。
・休日における公共施設の駐車場をはじめ公有地等の有効活用により、地区単位の駐車・駐輪場の確保を進めます。
・障がい者や高齢者等がマイカー以外でも、自由に各地域の文化活動拠点を巡ることができるよう、民間事業者の協力を得ながら、巡回バスや福祉タクシーの導入等を図り、総合的な交通計画を進めます。

 

3-3 豊かな心を育む文化活動の支援

【基本方針】
・次代を担う子どもたちをはじめ、市民の誰もが芸術に親しみ、自ら文化活動に参加できるように、学校教育、文化事業等を充実するとともに、市民や事業者、各種団体等が連携・協力して、それらの場や機会の拡充を図ります。

(1)学校と地域の連携による子どもの文化活動の推進

・一人ひとりの個性と豊かな人間性を育み、自ら創造する子どもを育てるために、保育園・幼稚園・学校等において芸術や地域文化に係る教育を充実するとともに、市民等の協力を得て子どもの文化活動を進めます。

・保育園・幼稚園・学校教育等において、文化会館や博物館、図書館等の各種文化施設を活用し、芸術や地域文化に係る学習教育の充実を図ります。
・学校と地域の連携を図り、地域ぐるみで子どもたちの文化活動を育むとともに、本来地域が持っている教育力の再生を図ります。
・学校施設等を活用して、児童・生徒等と地域住民の文化交流を進めるとともに、児童、生徒の地域ボランティア活動への参加の促進を図ります。
・学校の部活動等における芸術団体等のメンバーの派遣、農業従事者の派遣による農業体験授業の開催等により、地域の人材の積極的な活用を進めます。


(2)障害者、子育て家庭等に対する文化活動プログラムの充実
・障害者や子育て家庭等が芸術に親しみ、自ら文化活動に参加できるように、公民館や文化会館等のプログラムの充実を図ります。

・公民館や文化会館等における公演・講座等のプログラムにおいて、障がい者や子育て家庭等の意見を積極的に活用し、文化活動プログラムの充実を図ります。
・各種文化施設等において障がい者向けの駐車場を確保するとともに、障がい者や高齢者が気軽に文化施設に訪れることができるよう、移送サービスの充実を図ります。
・各種文化施設、公共交通関連施設等において障がい者や児童の作品の発表機会の創出を図るとともに、それらの環境整備を進めます。


(3)芸術に親しみ触れる機会の拡充
・市民の誇りとなる文化人を顕彰するとともに、市及び市民等が保有する美術品の公開や上演団体の招致等により、芸術や文化に親しみ触れる機会を拡充します。

・市民及び事業者団体等との連携により、市民の誇りとなる文化人を顕彰し、その文化人の作品や業績等に親しみ触れる機会を拡充します。
・各種文化施設等において市及び市民等が保有する美術品等の展示・公開の機会を拡充します。
・文化会館等において音楽や演劇、芸能等の上演団体を招致するとともに、市民団体等による上演の機会を拡充します。


(4)文化振興に係る人材の育成・確保
・市民の人材等を活用して地域における相互支援体制の確立を図るとともに、まち案内や文化イベント、施設管理等に係る市民ボランティアの育成及び確保、市内で活動する新人アーティストの発掘、育成を図ります。

・図書館や市川市文化振興財団等において芸術や地域文化に関わる人材バンクの整備を進めるとともに、市内の高等教育機関等の協力を得た市民文化講座等の充実を図ります。
・市内各所の文化的な資産の案内、各種文化イベントの企画・運営、文化施設の維持管理等に係る市民ボランティアの育成、確保を図ります。
・文学、音楽、美術等の新人発掘に係る各種コンテストの開催、民間団体等との連携による新人向けの演奏会・展示会の開催等により、市内で活動する新人アーティストの発掘、育成を図ります。


(5)市民の自主的な文化活動に対する支援体制の充実
・市民の自主的な文化活動の促進を図るため、市川市文化振興財団や民間企業、NPO法人等を通した間接的な支援体制の充実を図ります。

・市川市文化振興財団による市民の文化活動に対する資金助成の促進を図ります。
・市内民間企業におけるメセナ活動への参画を促進し、民間企業の支援による文化振興活動を進めます。
・民間企業をはじめ各種団体の協力を得て、文化に関わる各種市民団体やNPO法人等における組織運営等の人材育成・活動支援を進めます。

 

3-4 文化情報の発信と文化交流の促進

【基本方針】
・映像やインターネット等の媒体を駆使し、市川の文化に係る情報ネットワークを構築するとともに、市川の個性や魅力の情報発信を進めます。また、文化交流を通して、国際交流や国際理解の促進を図るとともに、人権の尊重や男女共同参画による多文化共生社会の形成を図ります。

(1)文化活動を支援する情報ネットワークの構築

・市内の文化施設や大学、各種団体が連携して、文化資源や文化活動に関する情報ネットワークを構築し、情報の共有化を図ります。また、インターネット等の活用により、市民が手軽に文化情報を得ることが出来るように環境整備を進めます。

・図書館と博物館、各学校間等の情報ネットワークを構築し、文化資源や文化情報のデータベースの共有化を図ります。
・文化情報サイトの充実、メールマガジンの発行等を図るとともに、携帯端末を活用した情報提供システムの整備を進めます。
・情報ネットワークシステムの構築を進め、それぞれの文化施設において、他の施設の文化情報の提供を図ります。
・市内の高等教育機関等の協力、テレビ講座の開催等により、広域的生涯学習支援システムの構築を進めます。


(2)市川の個性や魅力の情報発信
・市の広報やホームページ、広報映像などを通して、市川の個性や魅力の情報発信を進めるとともに、様々な機会や媒体を利用し、市外への市川のシティーセールス活動を進めます。

・市の広報、ホームページをはじめ、CATVやコミュニティFM等の様々なメディアを活用し、地域情報、文化情報等の発信を進めます。
・市川の魅力的な風景や個性的な文化活動に関わる映像制作を進めるとともに、市川の文化に係る広報映像の上映機会の創出を図ります。
・「街回遊展」等において市川の文化や魅力の情報発信を進めるとともに、市川のシティーセールス活動の一環として、テレビや映画等のロケ地としての情報や便宜の提供を図ります。
・市内広報スタンドの情報掲示板としての積極的な活用を図るとともに、それらの環境整備を進めます。


(3)国際交流と国際理解の促進
・地域在住外国人との文化交流等を通して、地域における国際交流と国際理解の促進を図るとともに、世界平和に対する市民意識の高揚を図ります。

・市川市国際交流協会をはじめ各種市民団体等の相互連携により、国際交流と国際理解に係る自主的な文化事業の展開を進めます。
・文化施設や文化情報の案内、刊行物等における外国語表記の充実を図ります。
・各種市民団体等の協力を得て、文化活動に対する地域在住外国人の参加促進を図ります。


(4)人権を尊重する社会、男女共同参画社会の形成
・多様な文化交流を通して、差別や偏見のない「自己実現、自立、社会参加」の権利を実現し、人権を尊重した社会の形成をめざします。また、男女がお互いに人権を尊重し、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現をめざします。

・市民団体等による文化交流イベントや学習会等を通して、人権尊重の社会形成に関する普及・啓発活動を進めます。
・文化に関わる女性の人材リストの作成・活用を進めるとともに、文化振興に関わる審議会やシンポジウムへの女性の積極的登用を図ります。
・文化イベントを通した各種啓発活動等により、男性の家事・育児参加の支援を進めます。


3-5 魅力を高め交流を深める街づくりの推進

【基本方針】
・市川を特徴づける景観の保全やルールづくり、身近な公共空間の環境整備等により、文化都市にふさわしい美しく魅力的な都市景観の形成を進めるとともに、地域の文化活動と街づくりの連携を図ります。

(1)市川を特徴づける景観の保全とルールづくり

・黒松、斜面林、歴史的建造物等、市川の個性を形づくってきた景観を保全・継承するとともに、それらを含めた住環境のルールづくりや維持管理活動等により、美しく魅力的な都市景観の形成を進めます。

・市川を特徴づける黒松や斜面林等の景観を保全するとともに、それらの景観を活かした建築等のルールづくりを進めます。
・旧行徳街道地区等、歴史的景観が残る地区において、歴史的建造物や巨木、屋敷林等の保全、外壁や塀等の修景、照明等の改善を進めるとともに、街並み形成に係るルールづくりを進めます。
・文化施設や学校施設等をはじめとした公共施設及び民家におけるブロック塀等については、セットバック等によりゆとりのある道路空間を確保するとともに、見通しの効くフェンスや生け垣等により、潤いのある街並みの形成を進めます。
・各地域において景観上重要な建造物等を評価し、その保全を進めるとともに、地域の文化や景観に配慮した取り組みを表彰し、それらの普及・啓発を進めます。
・市全体及び各地区において地域の文化や景観に配慮した施設整備及び住民活動等に関する計画や指針等を作成し、建築行為・開発行為及び維持管理に係る活動の誘導を図ります。
・景観形成に係る取り組みを進めるため、それに係る条例を制定するとともに、地区計画や建築協定等の建築等に係るルールづくりの促進を図ります。


(2)文化の視点を組み入れた身近な公共空間の環境整備
・市街地整備に文化の視点を組み入れ、道路や公園、駅前広場等の身近な公共空間のユニバーサルデザイン、周辺景観やデザインに配慮した公共施設の整備を進めるとともに、住民参加の環境美化活動を進めます。

・道路、公園、交通施設等の公共施設、公益施設は、高齢者等が安心して歩けるようにユニバーサルデザイン(バリアフリーの基本要素を満たしつつ、できる限り多くの人が利用でき、自然に溶け込んだデザイン)を進めます。
・周辺景観に影響を及ぼす公共施設、大規模建築物等については、それらの建築に係る景観整備指針を策定し、周辺景観に配慮した施設デザインの実施の誘導を図ります。
・市街地再開発事業等においては、企画・計画の段階から文化の視点を位置づけ、施設デザインや文化施設の導入を検討するとともに、公開空地等においてパブリックアート(公共空間に置かれた屋外彫刻等の立体造形作品)等の設置を進めます。
・駅前広場等においては、地域の「顔」として、駐車駐輪対策の徹底や屋外広告規制の強化を図るとともに、路面等の美装化や緑化を進めます。
・身近な地域においては、学校等を核として、住民参加による身近な道路や公園の清掃活動、花壇の手入れ活動等を進めます。


(3)地域の文化活動と連携した個性的な街づくりの推進
・商店街の活性化や住環境の維持・改善等にあたっては、地域の文化活動との連携を図り、各種イベントの開催等により個性的な街づくりを進めます。

・中心市街地活性化基本計画をはじめ商工業の振興に係る計画・事業において、文化の視点を導入し、商店街における地域の文化資源マップづくり、地域の文化資源を活用した街づくり計画の策定等を進めます。
・商店街の活性化の取り組みの一環として、市民を主体として地域文化を活かした催しの開催を進めます。
・市内の高等教育機関や各種文化団体等の協力を得て、空き店舗等の活用による文化活動の発表の機会と場の創出を図ります。
・住宅地や住宅団地等において、花木や照明等による修景、道路や空き地等の清掃等、住環境の維持・改善等に係る住民主体の活動を進めます。
・街づくり活動と連携した「街回遊展」等の文化イベントを開催し、個性的で文化的な街づくりの推進を図ります。

第4章 文化振興の推進体制の整備

4-1 市民と事業者と市の協働体制の整備

・文化振興の推進にあたっては、市民が主体となり、市民、事業者及び市が各々の役割を果たしつつ互いに補い合い、協働して取り組む必要があります。
・そのため、今後制定する条例に文化振興の視点を組み入れるとともに、市民、事業者、市による推進組織を設立し、全市的な文化振興と個性ある地域づくりの推進を図ります。


(市民と事業者と市の協働のあり方)
・文化振興の推進にあたって、市民が主体となり、市民、事業者及び市が各々の役割を果たしつつ互いに補い合い、協働することにより、全ての人が文化活動に参加、享受できるように努める必要があります。
・また、市民、事業者及び市は、地域における文化活動の重要性を認識し、豊かな文化活動を育むように努める必要があります。

(市民と事業者と市の役割)
・市民は、地域における文化振興の主役として、自主的かつ主体的に文化活動に参加し、互いに尊重・協力しあうことが求められています。
・事業者は、その事業活動を行うにあたって、文化を重視するとともに、積極的に地域の文化活動に参加・協力することが求められています。
・市は、市民の自主的・創造的な活動を尊重し、文化振興の推進体制を整備するとともに、必要な施策を講ずることが求められています。

(今後制定する条例への文化振興の視点の導入)
・このビジョンを行政計画として明確に位置づけ、「文化都市」の実現に向けた推進体制整備等の行政運営を進めるため、今後制定する条例に文化振興の視点を組み入れます。

(文化振興に係る推進組織の設立)
・そこで、市民、事業者及び市による「(仮称)市川街かどミュージアム都市推進会議」を設置し、全市的な文化振興と個性ある地域づくりの推進を図ります。
・同会議においては、この「市川市文化振興ビジョン」の実施に係る進捗状況を把握するとともに、最後に述べる「街かどミュージアム」の登録、「街回遊展」の開催、「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」等のリーディングプログラム及び主要な文化事業に係る課題、基本方針等について協議し、それらの推進を図ります。

 

4-2 文化行政の推進体制の整備

・文化振興の推進にあたっては、行政組織及び施策に文化の視点を盛り込み、それぞれの業務を市民サービス・費用対効果の視点から見直すことにより、行政全体の質を高めていく必要があります。
・そのため、全庁横断的な推進体制を整備し、文化振興施策の計画的な推進と行政の文化化を図ります。


(行政の文化化の推進)
・文化振興の推進にあたっては、施策を計画的に進めるだけでなく、行政の文化化に取り組む必要があります。
・行政の文化化とは、職員、組織、運営方法等を含めた行政自体と行政施策に人間性、創造性、美観性、地域性等の文化の視点を盛り込み、それぞれの業務を文化の視点及び市民サービス・費用対効果の視点から見直すことにより、行政全体の質を高めていくものであります。
・業務の見直しにあたっては、文化の特性に留意しつつ、会務に係る情報開示や市民ニーズの把握を図るとともに、文化施設と特性や利用者等に応じた利用料金制の導入のあり方を含め、施設の利用に係る受益者負担のあり方について様々な角度から検討する等、効率的で効果的な行政運営を進める必要があります。

(全庁横断的な推進体制の整備)
・そのため、全庁横断的な推進組織として、関係各部課による「(仮称)市川市文化行政推進会議」を設置し、施策の計画的な推進と行政の文化化を図ります。
・同会議においては、文化振興施策及び行政の文化化の進捗状況、業務評価、事業効果等を把握し、必要に応じて適宜情報開示するとともに、関係各部課が連携し横断的に取り組む施策・事業の推進を図ります。

 

4-3 市川市文化振興財団の機能の拡充

・市川市文化振興財団は、市民・事業者等の協力を得ながら、本市の文化振興に係るセンター組織として、その機能の拡充を図り、市民における文化芸術の普及及び向上等に係る各種事業を進めるとともに、市の文化施設等の管理運営等を図りながら、文化事業に係る人材育成、助成金の交付等により市民の各種文化活動を支援します。


(市川市文化振興財団の機能の拡充)
・市川市文化振興財団は、市民・事業者等の積極的な参加・協力を得て、本市の文化振興に係るセンター組織として、その機能の拡充を図り、市民における文化芸術の普及・向上及び文化資源の活用等の普及・推進に係る各種事業を図ります。
・文化会館、市民会館、市民談話室、寄贈民家等を活用した市の施設等については、計画的な施設管理、効率的な運営管理を進めます。また、市及び市民団体が企画する文化事業の開催を拡充するとともに、学校への出前コンサート等、管理施設以外での事業展開も検討し、地域に拡がり魅力ある自主事業を進めます。
・これまでと同様、自主事業等による自主財源の確保、企業メセナ協議会等のより一層の活用や、市民・事業者の寄付行為等による資金の協力を得るとともに、市民による文化事業の実施等に関する情報発信、組織運営等に係る人材育成や助成金の交付等により、市民の各種文化活動を支援します。

リーディングプログラム「街かどミュージアム都市づくり」の展開

・市川市文化振興ビジョンの具体化に向け、第3章に示した基本方針と基本方策に係る施策をリード(牽引)するプログラムであり、「街かどミュージアム都市づくり」を展開するものです。
・「街かどミュージアム」とは、地域固有の魅力を掘りおこし、それをまちづくりに活かしていくための文化的な活動の場を指します。文化資源を収集、保存、伝達、展示する施設だけにとどまらず、地域の人材、ノウハウなどの文化資源を活用した生活、教育、商工業など、様々な活動の場を含みます。
・「街かどミュージアム都市」とは、そうした活動の場をつなげる環境をいいます。それは建物や道路などの物的な環境だけでなく、文化的な活動を支える社会的なシステムや情報ネットワークまで包含します。
・「街かどミュージアム都市づくり」を展開するために、次の4つのプログラムを進めます。
 (1)民間の「街かどミュージアム」の登録の推進
 (2)「街回遊展」の全市的な展開
 (3)地域の「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」策定の推進
 (4)「街かどミュージアム」の拠点と情報ネットワークの整備

(1)民間の「街かどミュージアム」の登録の推進

・市民の文化活動に寄与し、市民に対する公開又は市民の利用が可能な民間施設等を把握し、「街かどミュージアム」の登録を積極的に進めます。
・そのため、登録制度を整備するとともに、登録内容のデータベースの作成、公開、共有を図ります。


(「街かどミュージアム」の登録推進)
・市民や民間事業者等が所有又は管理する住宅・事業所等の中には、地域の文化資源として価値のある施設が少なくありません。そこで、これらを「街かどミュージアム」として位置づけ、その登録を積極的に進めるとともに、そのデータベースを作成・共有し、以てそれらの活用を進めます。
・登録を進める「街かどミュージアム」は、市民の文化活動の促進に寄与し、市民に対する公開又は利用が可能な民間施設、場所を対象とします。次に示すような5つの種類のミュージアムが考えられます。
(1)「収蔵ミュージアム」:文化的な作品を収蔵する場
(2)「歴史ミュージアム」:歴史的な環境を保有する場
(3)「学習ミュージアム」:文化的な学習活動を支援する場
(4)「創作ミュージアム」:文化的な創作活動を支援する場
(5)「交流ミュージアム」:文化的な交流活動を支援する場

(登録制度の整備)
・市は、「街かどミュージアム」の登録に係る制度を整備し、登録されたミュージアム情報の活用を図ります。
・登録は、その施設の所有者又は管理者が申請し、データベース化します。市又は市川市文化振興財団がこのデータベースの管理者となり、登録されたデータの入力・整理・管理・公開等の業務を行うこととします。
・データベースはウエブサイト上に掲載し、市民に公開するとともに、市の地理情報システム(GIS)とも連携し、利用の効果を高めるものとします。

(登録文化財)
・登録された「街かどミュージアム」のうち、一定の条件を満たしたものについては「登録文化財」の対象として推薦していきます。

 

(2)「街回遊展」の全市的な展開

・「街回遊展」については、地域のまちづくりとの連携を強化し、市内各地における開催を進めます。
・「街回遊展」の開催にあたっては、市民が主体となり、事業者及び市との協働の実行体制を整備するとともに、期間限定のイベントから日常的なまちづくり活動への展開を図ります。


(地域のまちづくりとの連携)
・「街回遊展」は、地域の各種文化資源を活用し、それらを歩いて回遊することにより、地域の魅力を再発見し、様々な交流を促進する催しであることから、単なる文化イベントではなく、地域のまちづくりに通じる性格を持っています。
・今後は、狭い意味での文化事業にとどまることなく、教育、福祉、商工業、街づくり等の分野にも範囲を広げ、計画段階から地域のまちづくりとの連携を強化していく必要があります。
・特に、「街かどミュージアム」のネットワークとその拡大普及を図ることを念頭に置き、学校施設の活用、バリアフリー、商店街の活性化、食文化の検証、案内図やサインの充実、街並みの景観向上、防災・防犯の住民活動等も含めた取り組みが求められています。
・また、「街回遊展」の開催を通して明らかになった回遊展会場の案内図とサインの改善・充実、「街かどミュージアム」候補周辺の環境整備と維持管理、周辺地域における駐車場、巡回バスの確保等の課題について継続的に検討を進め、まちづくりとして具体化していくことも求められています。

(市内各地における展開)
・「街回遊展」は、これまで歴史的な文化資源が集中した地域において開催されてきましたが、今後は、市内各地で開催することが望まれます。
・そのためには、開催の規模の大小を問わず、「街かどミュージアム」等の文化資源を活用した回遊イベントを「街回遊展」として位置づけ、日常的なまちづくり活動の一環として開催を進めていくことが求められています。

(市民主体の実行体制の整備)
・「街回遊展」は、開催にあたって、地域住民が主体的に参加し、市民と事業者と市の協働により実行委員会を組織し、準備・運営してきました。
・今後はより一層、地域住民が自主的かつ主体的に実行委員会の組織・準備・運営に参画し、それぞれの役割分担のもと、実行にあたる必要があります。

 

(3)地域の「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」策定の推進

・地域における「街かどミュージアム」の登録促進、活用管理、情報ネットワークの形成及び文化的な街づくりを進めるために、それらに係る地域の「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」の策定を図ります。
・計画の策定にあたっては、地域住民等による協議会が主体となり、市はその活動を支援します。また、「街回遊展」を開催した地域をモデル地区として計画の策定を進めます。


(計画策定の目的と対象)
・地域の文化資源を活用し、地域における「街かどミュージアム」の登録、活用管理、情報ネットワーク及び文化的な街づくりを進めるために、地域における「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」の策定を図ります。
・「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」の対象は、歩いて暮らせる生活圏とします。計画発意の主体により大きく分けて次の3種類があります。
(1)市民(民間事業者・NPO等を含む。)の発意による計画
 例えば、商店街活性化の計画、住環境の保全計画、「文化村」の計画など
(2)市の発意による計画
 例えば、景観形成重点地区の計画、「文化ゾーン」のモデル地域の計画など
(3)市民と市の協働の発意による計画
 例えば、「街回遊展」を契機とした継続的取り組みの計画など

(計画策定の内容)
・策定する計画の主な内容は、次のものが考えられます。
(1)「街かどミュージアム」の登録促進計画
 例えば、登録候補を挙げ、所有者又は管理者に登録を働きかけること等
(2)「街かどミュージアム」の活用計画
例えば、「街回遊展」の開催計画、ガイドシステムの整備計画等
(3)「街かどミュージアム」の維持管理計画
 例えば、登録文化財の推薦、維持管理に係るNPO法人の設立等
(4)「街かどミュージアム」の情報ネットワーク計画
 例えば、「街かどミュージアム」のマップ又はウエブサイト等の作成計画等
(5)「街かどミュージアム」に係る街づくり計画
例えば、「街かどミュージアム」を結ぶ歩道等の整備等、公衆便所等の整備、地域における駐車場

(計画策定の主体と支援)
・計画は、市民が主体となって策定し、市及び事業者との協働により計画の実現を図ります。計画の策定にあたっては、「(仮称)○○地区街かど・まちづくり協議会」を組織化し、この協議会が策定することとします。
・市民が発意した計画(但し既存の補助制度があるものは除く)については、計画の策定に係る費用を一部助成するとともに、必要に応じて専門家を派遣することとします。

(モデル地域における計画策定)
・これまで「街回遊展」を開催したことのある地域を「文化ゾーン」として設定し、「(仮称)文化の街かど・まちづくり計画」策定のモデル地域として、地域関係団体及び市民(公募)による「(仮称)○○地区街かど・まちづくり協議会」を組織化し、計画の策定を進めます。
・策定にあたっては、景観モデル地域や都市計画マスタープラン策定等の取り組みとの連携を図ります。

 

(4)「街かどミュージアム」の拠点と情報ネットワークの整備

・市に寄贈された民家等を活用した「街かどミュージアム」については、地域の文化活動の拠点として、住民参加の管理運営体制を整えるとともに、周辺を含めた環境整備を進めます。
・市所有の美術品や歴史資料をはじめとした文化的資料のデジタル化を進めるとともに、民間施設を含めた「街かどミュージアム」の文化情報をデジタル化し、「デジタルミュージアム」の整備を進めます。


(寄贈民家等の「街かどミュージアム」の管理体制の整備)
・市に寄贈された民家、敷地、美術品等を活用した「街かどミュージアム」については、地域の文化活動の拠点として位置づけ、市及び市川市文化振興財団等の支援を得ながら、地元住民及び市民の主体的な参加により管理運営体制を整えることを基本とします。また、施設の性格によっては、必要に応じて専門家の協力を得るものとします。
・管理運営にあたっては、各施設ごとに関係者による管理運営協議会を設置するとともに、必要に応じて専門的な管理運営スタッフを配置することとします。なお、施設によっては、管理運営協議会がNPO法人の認証を受け、活動することも考えられます。

(寄贈民家等の「街かどミュージアム」と周辺環境の整備)
・市に寄贈された民家等を活用した「街かどミュージアム」については、可能な限り既存施設を活用することとし、建物の老朽度や関連法規、機能上の不都合等がある場合には、改築・改修等を行うものとします。また、一定の条件を満たしたものについては登録文化財の対象として推薦するものとします。
・「街かどミュージアム」への交通手段は、原則として徒歩又は自転車としますが、徒歩による往来が困難な高齢者、障害者等の利用も想定されることから、周辺に駐車場を確保することとします。駐車場の確保にあたっては、学校施設を含めた市の公共施設を活用するなどして、地域において駐車場を確保することとします。
・最寄り駅から「街かどミュージアム」への主要ルート及び近隣の「街かどミュージアム」への回遊ルートについては、周辺景観に配慮しつつ、必要に応じてサイン(標識)や公衆便所等の整備を進めることとします。同時に、歩道及び交差点等の改良工事を積極的に進め、沿道住民等の協力を得て、街並みの景観向上を図ります。

(「デジタルミュージアム」の整備)
・市が所有する美術品等の作品、博物館・図書館等が保有している歴史資料をはじめとした文化的資料については、順次デジタル化を進め、市民が気軽にウエブサイト上で、作品を鑑賞し、資料の所在を調べることができるようにします。
・また、民間施設を含めた「街かどミュージアム」の文化情報(所在地、特徴、開館時間、イベント等の情報)をデジタル化し、市又は市川市文化振興財団のウエブサイト上において「デジタルミュージアム」の整備を進めます。
・「デジタルミュージアム」は、市が進める地理情報システム(GIS)と連携し、携帯端末を含め、ウエブサイト上で「街かどミュージアム」の道案内等ができるようにシステムの構築を進めます。

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〒272-8501
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