更新日: 2021年7月21日

中山忠彦氏プロフィール

 中山が永遠のモデル「良江」と出会うのは、1963年5月、写生旅行で乗った会津若松の近くのローカル線の中だった。列車を降りるとき、二つ前の席に座る女性に、東京の住所と、画家を目指していることなどを書いた紙切れを渡す。
「それは五月の十日前後、新緑のころでしたから、車窓から緑が照り映えて、なかなか雰囲気としては良かったんですね。」(「中山忠彦先生インタビュー」美じょん新報21 2001年6月)
間もなくはがきが届き、2年後に二人は結婚。そして、「YOSHIEは私の外部にある私の内部です」とまでいわれる二人の歩みがスタートしたのだった。
スケッチブック

若いころ愛用のパレット(1960年代に使用)
若いころ愛用の絵の具箱
(1960年代に使用)

若いころ愛用のスケッチブック(1950年代 20歳ころに使用)
若いころ愛用のオリンパスペン (1950年代後半~1960年代に使用)

 中山が市川に居を構えたのは、結婚して間もない1966年、今の市川グランドホテルの場所にあった、妻良江の遠縁に当たる小島鉦治宅の離れであった。ほどなく、同郷の眼科医木村又郎の援助を受けて、庭の一部に12坪の仮のアトリエを構えた。市川駅との間は、戦後の闇市の名残をとどめる商店が連なっており、雨に濡れずに駅まで行くことができた。貧しいころで、その中のうなぎ屋の匂いがうらやましかった。数年後に、ホテル計画が持ち上がり、あちこち土地を探し求めた末、深い緑に囲まれた国府台5丁目に移り住むことになる。
新聞随筆
中山忠彦の市川・国府台日記(『アート・トップ第62号』1981年4月号)
京葉市民新聞リレー随筆 1975年9月25日号
ゼンリンの住宅地図市川(1972年)
1970年に建てた国府台の最初のアトリエは、木造2階立てで、ローコスト住宅として雑誌にも紹介された。鉄板屋根で、クーラーがよく効かず大変だった。当初68坪の敷地だったが、空家になった隣地を買い足し、今の鉄筋のアトリエに改装されたのは、1993年のことである。市川時代も国府台木造時代も現在も、アトリエは北窓で、採光に気を配っている。アトリエにはオーディオセットがあり、モーツァルト・シューベルトなどを常時かけながら制作を続けている。妻との共通の好みである西洋アンティークの調度品が、空間に調和している。気分転換に散策するのは、アトリエ近くのじゅん菜池や真間山などがお気に入りの場所である。
建築
住宅建築 1995年10月号(国府台のアトリエ紹介記事)
新建築
 1993年12月号(国府台のアトリエ紹介記事)

プロフィール

昭和10(1935年)3月20日 福岡県小倉市(現北九州市)に生まれる
昭和19(1944年)1月9歳戦争の激化にともない両親の出生地に疎開
昭和25(1950年)4月15歳県立中津西高(現中津南高)に入学 この頃より故武田由平先生の指導を受ける
 10月 県展に初出展して入選
昭和26(1951年)9月16歳田能村竹田を偲ぶ美術展に出品し、県知事賞を受賞 記念に叔父より油絵具一式を贈られる
昭和28(1953年)2月18歳上京し、大垣誠三氏より伊藤清永先生に紹介される さらに、伊藤清永先生の紹介で阿佐ケ谷洋画研究所(三輪孝氏主宰)に入る
 3月 県立中津西高を卒業、東京芸術大学を受験するも不合格
 4月 岩崎電気(株)でデザインのアルバイトをしながら、夜間阿佐ケ谷洋画研究所に通う
 11月 伊藤絵画研究所が開設され、内弟子として入門する
昭和29(1954年)10月19歳父大作死去
 10月 第10回日展に「窓辺」60号が初入選
昭和32(1957年)7月22歳渋谷区上原に転居し、独立生活を始める
昭和33(1958年)3月23歳白日展に「群像」を出品し、会員に推挙される
 10月 社団法人第1回日展に「二人」を出品
昭和34(1959年)10月24歳母千鶴死去
昭和38(1963年)5月28歳会津若松に写生旅行中、若林良江と出会う
昭和40(1965年)3月30歳若林良江と結婚

市川時代

昭和41(1966年) 1月 31歳 市川市市川1丁目(現市川グランドホテル)の小島鉦治方に転居
  6月   木村又郎氏の好意と援助により仮アトリエ(12坪)が出来る
昭和43(1968年) 3月 33歳 大阪・日仏画廊にて初の個展を開催
昭和44(1969年) 5月 34歳 彩壷堂にて個展を開催
  10月   改組第1回日展に「椅子に倚る」100号を出品し、特選受賞
昭和45(1970年) 9月 35歳 市川市国府台に画室を新築して転居
昭和47(1972年) 6月 37歳 初の欧州旅行(夫人と共に2ヶ月にわたりヨーロッパを旅行)
昭和48(1973年)   38歳 アトリエと寝室を増築
昭和49(1974年) 6月 39歳 欧州旅行、その途中南伊チレニア海を臨むジスモンディ別荘に寄寓する
  12月   リトグラフ集「Les Trois Femmes」を出版
このころ、ヨーロッパのアンティークドレスを中心とした服飾品の蒐集を始める
昭和50(1975年) 9月 40歳 『京葉市民新聞』に「スケッチブックから」掲載
昭和51(1976年) 5月 41歳 渡仏してパリのクロード・ベルナール街63番地に滞在(9月半ばまで)
  6月   東京・セントラル絵画館にて個展開催
昭和54(1979年) 6月 44歳 石版画集「粧」を出版
昭和55(1980年) 3月 45歳 白日展に「妝う」80号を出品し、内閣総理大臣賞を受賞
昭和56(1981年) 4月 46歳 『アート・トップ62』に「中山忠彦の市川・国府台日記」掲載
  9月   石版画「花かざりの帽子」を刊行
  11月   日展に「縞衣」80号を出品し、特選受賞
  12月   銅版画集「優しき相貌」第1集を刊行
昭和57(1982年) 6月 47歳 渡仏してパリのケ・ボルテール15番地に滞在(9月まで)
  9月   石版画「妝」を刊行(大日本絵画刊)
昭和58(1983年) 10月 48歳 「中山忠彦画集」を出版(求龍堂)
昭和59(1984年) 10月 49歳 石版画「襟飾り」を刊行
  12月   銅版画集「優しき相貌」第2集を刊行
昭和60(1985年) 10月 50歳 フジテレビ、テレビ美術館「中山忠彦・新しい女性美を求めて」が放映される
  10月   「昭和世代を代表する作家シリーズ 中山忠彦展」が開催され 新宿伊勢丹・名古屋松坂屋・大丸心斎橋・福岡県立美術館を巡回する
昭和61(1986年) 7月 51歳 日本経済新聞に「装いにみる女性美十選」を執筆、連載される
昭和62(1987年) 3月 52歳 白日展に「花と女」を出品
  9月   石版画「羽根かざりの帽子」を刊行
  10月   日展会員となる
昭和63(1988年) 8月 53歳  「中山忠彦作品集」を出版(講談社)
  9月   日本橋・春風洞画廊にて「三人展」(野田弘志・森本草介・中山)を開催
平成元(1989年) 5月 54歳  大分県中津市に木村記念館が開館、作品が常設展示される
平成2(1990年) 4月 55歳 国際花と緑の博覧会の迎賓館・政府苑貴賓室に「花装」が展示される 同博覧会協会の依頼により石版画「双花」を制作する
  11月   日展に「青衣」100号を出品し、日展会員賞受賞
平成3(1991年) 5月 56歳 日本橋・エアアートにて版画展を開催
  5月   銅版画集「優しき相貌」第3集を刊行
  7月   国府台のアトリエの改築のため、北品川に仮住まいする
平成4(1992年) 9月 57歳 船橋TOBUで「房総ゆかりの画家現代秀作美術展」を開催
平成5(1993年) 11月 58歳 アトリエ開き
  12月   『新建築92』に「国府台のアトリエ」掲載
平成6(1994年) 10月 59歳 石版画「ローブ・ド・パル」を刊行
平成7(1995年) 10月 60歳 『住宅建築247』に「国府台のアトリエ」掲載
平成8(1996年) 4月 61歳 大分・トキハにて個展を開催
  11月   日展に「華粧」100号を出品し、内閣総理大臣賞受賞
平成10(1998年) 3月 63歳 「黒扇」にて日本芸術院賞受賞
  4月   日展理事となる
  12月   日本芸術院会員となる
平成11(1999年) 3月 64歳 日展常務理事となる
  10月   中津市主催「中津の洋画家たち 中山忠彦展」を開催
平成12(2000年) 6月 65歳 市川市収蔵美術作品展「市川の美・点と線」に「サロンにて」出品
平成13(2001年) 3月 66歳 日展事務局長となる
  9月   市川の文化人展「洋画家中山忠彦・美の世界展」を開催 15日~24日
  9月   松屋銀座にて「デッサン展」を開催(朝日新聞社主催)26日~10月1日
平成14(2002年)   67歳 白日会会長就任
      市川市文化振興財団理事となる
平成19(2007年)   72歳 市川市市政功労賞受賞
      北九州市民文化賞受賞
平成21(2009年)   74歳 日展理事長就任(~'13)
      中津市民栄誉賞受賞
平成26(2014年)   79歳 市川市名誉市民として顕彰される
平成27(2015年)   80歳 市川市文化振興財団理事長就任

主要参考文献

パレット
『中山忠彦展』図録 読売新聞社 1985年
『中山忠彦作品集』 講談社 1988年
『中山忠彦展』図録 大分県立芸術会館 1993年
『中津の洋画家たち』 中津市制70周年記念事業委員会 1999年


関連リンク

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