更新日: 2022年2月8日

自然環境 市川市都市鳥生息調査の概要

市川市の自然環境

市川市のカラス類対策

市川市では、ごみを散らかしたり、糞が汚い、繁殖期に巣の近くで人を威嚇するなど、街に生活する人とカラス(ハシブトガラス、ハシボソガラス、以下カラス類)のトラブルが2000年ごろより見え始めていました。

このため、2001年から2002年にかけて、カラス類について市川市に生息する個体数や生息場所、採食状況などの生息状況を把握する調査を実施しました。この調査結果を基礎資料として、カラス類をはじめとする都市鳥と人の適切なつきあい方の方針を得ました。そしてこれらの調査結果に基づき、餌となるごみ対策を中心にカラス類への対策を講じてまいりました。

先の調査やカラス類への対策開始から、すでに5年以上が経過しました。カラス類の生息状況について現状を把握するため、さらにカラス類への対策の効果の検証のため、2006年から2007年にかけて、先の調査とほぼ同様の調査を行いました。

調査の内容

調査内容は、2001年から2002年に実施した調査と結果を比較するため同様の方法、内容で実施しました。

 

1).総生息数の把握

ねぐらを発見しねぐらに入る個体数を数えることで、市川市とその周辺に生息しているおよそのカラス類の個体数を把握しました。またねぐらへ出入りするコースから、どの方向からやって来るのかの推定を行いました。ねぐらに集まる個体数は、繁殖の始まる前の1月と繁殖が終了した9月に調査して増減の把握を行いました。

2).生息状況の把握

越冬期の1月と繁殖期の5月に市内に10ヵ所の調査コースを設定して、確認できたカラス類の個体数を数えました。同時に、ごみ集積所の被害実態、対策実施状況も調査しました。

3).繁殖状況の把握

繁殖期の5月に500メートル四方の調査区画を市内21ヶ所に設定し、この調査区画内と大町公園、里見公園においてカラス類の巣の数を数え、繁殖の状況を記録し、さらに繁殖数を推定しました。

   

調査結果

1).ねぐら調査

5年前と同様に市川市真間4丁目(以下、真間山ねぐらと記載)と船橋市藤原2丁目(以下、藤原ねぐらと記載)の2ヵ所に1月、9月ともカラス類の大規模ねぐらを確認しました。

2ヶ所のねぐらに集まる個体数の合計は、2007年1月が4,877羽、9月が5,833羽でした。

2002年は1月が5,638羽、9月が5,867羽でした。1月は真間山ねぐらの減少が大きく作用していますが、全体では13%ほどの減少となります。9月は、ほぼ同じ数となり増減はありませんでした。

少なくともここ5年の間では、ねぐらに集まるカラス類の個体数はやや減少しており、増加はしていないと言えます。

ねぐら入りの調査の翌朝に真間山ねぐらから飛び出し、江戸川を越えて東京都方向に飛んでいくカラス類の個体数を数えた結果、2007年1月は599羽、9月は504羽が東京都方面へ飛んでいき、昼間は東京都で過ごしているカラス類がいることがわかりました。真間山ねぐらに集まるカラス類の内、1月は41%、9月は27%となりますが、カラス類は夜間もねぐらを飛び立つことが知られていますので正確な割合は不明です。しかし、少なからず東京都と関連があると言えます。

2).カラスとごみの関係

2007年の調査では、ごみ対策が正しく行われていたのは、1月が256ヵ所のごみ集積所の内118ヵ所、5月が260ヵ所の内123ヵ所。2002年は、1月が277ヵ所の内75ヵ所、5月が349ヵ所の内111ヵ所でした。パーセンテージにすると、1月が27%から46%、5月が32%から47%といずれも2002年よりも増え、正しい対策方法が普及していることがわかります。

また、カラス類の被害を受けたものは、2007年1月が256ヵ所の内8ヵ所3.1%。5月は260ヵ所の内、12ヵ所4.6%でした。2002年1月の調査では、被害率は1月が4.3%、5月が8.3%でしたので、いずれも減少しています。

同時に数えたカラス類は、2007年1月が42羽、5月28羽でした。2002年の調査では、1月が82羽、5月が44羽でしたので、1月は49%、5月は37%減少したことになります。  

これにより、正しい対策方法が増えたことで、ごみ集積所周辺のカラス類が減り、カラス類の数が減ったことで被害率が減少していることがわかります。

3).繁殖状況

2007年5月の調査では、調査区画内と大町自然公園、里見公園内で合計77巣を確認しました。

2002年に行った同様の調査では、71巣でした。このため、6巣8%増加したことになります。しかし、利用状況が不明な巣が12巣から34巣と22巣増えています。不明の巣は、古巣や試作巣などの繁殖に利用されない巣である可能性が大きいので、これを考慮して全体には大きな増減はなかったと考えられます。

  • ※利用状況が明らかな巣 2002年59巣 → 2007年37巣

また、同時期に行ったカラス類の個体数を数える調査では、252羽を記録しました。2002年が254羽でしたので、ほとんど変わりがないと考えられます。

 

まとめ

調査から、ねぐらに集まるカラス類はやや減少。市内で繁殖している数は、変化がないかやや減少。ごみ集積所周辺では半数近く減少しているという傾向が把握できました。

ねぐらに集まるカラス類は、東京都や周辺の地域との関係が大きく、市川市が実施している対策の効果が反映されにくいと思われます。また、カラス類は推定で20年程度の寿命があること、繁殖している成鳥はなわばりに固執していることから5年間の対策からの効果は出にくいと思われます。

しかし、餌となるごみ対策の結果、ごみ集積所周辺のカラス類は減少し、さらにごみが散乱される被害は減っていることは、間違いありません。

また、ねぐら入りの個体数を2002年と比較すると1月の減少率が高いことがわかります。これは、自然界で餌が減少する冬季の生息条件が悪くなっていることを示すとも考えられ、ごみ対策の効果の現れともいえます。9月の数に変化はないのは、繁殖による巣の数に変化がなく雛を育てる親鳥の数が変わっていないことに符合します。この数字から、毎年同じように雛が生まれていますが、ごみ対策の結果、冬を越せない若鳥がいて、全体では減少傾向にあると言えるでしょう。

現状のごみ対策を続けること、さらに充実することで、これ以上カラス類の個体数が増加することは避けられ、さらに減少していく方向に持って行くことができると思われます。

都市において、カラス類は人間生活を利用することによって個体数を増やしていると考えられます。人間が出す生ごみや残飯、餌やりなどにより、一年中安定して食料を得ることができます。また、天敵がおらず、鉄塔や電柱、ビルなどの人工物で、ハンガーや針金など身近な廃物を材料に安全な繁殖場所も確保できます。

カラス類は個体数が増えたことによって、人間とのトラブルが増えています。しかし、カラス類をむやみに捕まえても、その個体数はわずかしか減らせず、根本的な解決にはなりません。市川市は総合計画の基本構想として「自然との共生」を掲げており、ごみを餌とさせない、餌付けをしない等により、人間が自然のバランスを崩すことのないようにすることが最も重要であると考えています。このような事に配慮した対策を通じて、自然のバランスにあった適正な数を取り戻すことにより、「人と自然が共生するまち」づくりを目指しています。

人と自然が共生するためには、自然やそこに生きる生物について良く知り、人が”知恵”と”謙虚さ”をもって接することが求められます。カラス類をはじめとして、都市に生息する野生生物と人との共生について、市民の皆さまと共に考えてまいります。

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