更新日: 2006年6月7日

2006年6月7日 会議録

会議
午前10時15分開会・開議
○井上義勝議長 ただいまから平成18年6月市川市議会定例会を開会いたします。


○井上義勝議長 直ちに本日の会議を開きます。
 今期議会で説明のため、執行機関に対し、あらかじめ出席を求めておきましたからご報告いたします。


○井上義勝議長 会議録署名議員の指名を行います。会議録署名議員は、会議規則第80条の規定により、石崎たかよ議員及び笹浪保議員を指名いたします。


○井上義勝議長 日程第1会期の件を議題といたします。
 お諮りいたします。今期の定例会の会期は、本日から6月23日までの17日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上義勝議長 ご異議なしと認めます。よって会期は17日間と決定いたしました。


○井上義勝議長 日程第2議案第1号市川市平和無防備条例の制定についてを議題といたします。
 提出者から提案理由の説明を求めます。
 総務部長。
〔本島 彰総務部長登壇〕
○本島 彰総務部長 議案第1号市川市平和無防備条例の制定についての提案理由及び市長の意見につきましてご説明申し上げます。
 本案は、平成18年5月23日、地方自治法第74条第1項の規定に基づく条例制定の直接請求を受理したので、同条第3項の規定に基づき、市長の意見をつけて議会に付議する必要があるため、この条例案を提出するものであります。
 なお、本条例案に対する市長の意見を申し上げます。
 今回の直接請求に係る市川市平和無防備条例(案)(以下「条例案」という。)は、日本国憲法の平和主義の理念、政府の掲げる非核三原則、ジュネーブ条約などの国際人道法及び本市の核兵器廃絶平和都市宣言に基づき、無防備地域宣言を行うことにより、住民の平和と安全を保障することを目的としており(第1条)、その目的を達成するため……。
○井上義勝議長 傍聴人に申し上げますが、カメラのフラッシュはご遠慮ください。
○本島 彰総務部長 市民の平和的生存権(第3条)、無防備地域宣言(第4条)、市の責務(第5条)、平和事業の推進(第6条)等を定めるというものである。
 条例案の中心となる「無防備地域宣言」については、ジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書第59条第2項において、「紛争当事者の適当な当局は、
 ① すべての戦闘員が撤退しており並びにすべての移動可能な兵器及び軍用設備が撤去されていること。
 ② 固定された軍事施設の敵対的な使用が行われないこと。
 ③ 当局又は住民により敵対行為が行われないこと。
 ④ 軍事行動を支援する活動が行われないこと。
という要件のすべてを満たす地区であって、敵対する紛争当事者による占領に対して開放されるものを、無防備地区として宣言することができる。」と規定されていることから、この宣言を行うためには、これらの要件のすべてを満たす必要があるが、戦闘員の撤退、移動可能な兵器及び軍用設備の撤去並びに軍事施設の使用は、国の権限に属するものであり、そもそも本市はその権限を有していないため、これらの要件のすべてを満たすことができない。
 さらに、この宣言に関し、国は、「当該地域の防衛に責任を有する当局、すなわち、我が国においては、国において行われるべきものであり、地方公共団体が当該宣言を行うことはできないものである。」とし、「たとえ特定の都市が宣言したとしても、それはジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書において規定されている宣言にはあたらない。」との見解を示している。
 したがって、仮に、本市が無防備地域宣言を行ったとしても、ジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書第59条第1項の規定による攻撃が禁止される地区としての特別の保護を受けることはできないものであり、何ら実効性を有するものではない。
 また、地方自治法第14条第1項では、法令に違反しない限りにおいて地方公共団体の権限に属する事務に関して条例を制定することができるとされていることから、地方公共団体の事務に属さないと考えられる「無防備地域宣言」について条例を制定することは、同法に抵触するおそれがある。
 以上のとおり、条例案は、実効性が認められないとともに、地方自治法に抵触するおそれがあると考えられるため、この条例案の制定に賛成しかねるものである。
 世界の恒久平和は人類共通の願いであり、市民の平和と安全を確保することは、国及び地方公共団体の最も重要な責務であって、本市としては、新たな制度を定めるのではなく、今後とも、核兵器廃絶平和都市宣言を行っている本市の責務として、平和事業や国際交流などに取り組み、市民一人ひとりに平和の願いとその尊さを訴え、広く人々に平和を希求する心がはぐくまれるよう、さまざまな施策、事業の推進に積極的に努力したいと考える。
 以上が市川市長の意見でございます。
 よろしくご審議のほどお願いいたします。
○井上義勝議長 これより地方自治法第74条第4項の規定により、条例制定請求代表者の意見陳述を行います。
 意見陳述者は、田口雅明氏、伊藤精史氏、立花一晃氏の3名であります。また、意見陳述時間は、1人10分以内と議会運営委員会において決定されております。
 なお、傍聴者にあらかじめ申し上げます。市川市傍聴規則において、傍聴者は拍手などにより可否を表明すること、発言等をすることは禁止されておりますので、傍聴規則を遵守されるようお願いいたします。
 まず、田口雅明氏の入場を求めるとともに、発言を許可いたします。
〔田口雅明条例制定請求代表者入場、登壇〕
○田口雅明条例制定請求代表者 陳述します。
 私は、堀之内3丁目在住の田口です。会を代表する立場でもありますので、この直接請求に取り組んだ人たちの声も含めて代弁します。そして、条約、法律関係に関して整理して発言します。
 この直接請求の署名集めで、本当に多くの人々の協力を得ることができました。規定数7,530名を大きく超える1万1,119筆を集めることができました。多くの協力者、署名をしてくださった方々の平和への強い願いがあったからです。
 平和をめぐる情勢について述べたいと思います。
 今、米軍の世界的な再編に合わせ、米軍と自衛隊の一体化が進んでいます。キャンプ座間、横田基地には日米統合司令部が設置されようとしています。米軍の世界各地の戦争へ自衛隊が一体となって海外へ出動していく状況が、まさに今つくられようとしています。米軍再編、海兵隊グアム移転への3兆円支出問題が、今出てきています。米軍との一体化が進んでいる自衛隊が既にイラク派兵され、特に航空自衛隊が在イラク米軍の兵たんを担っている状況です。戦争を継続するための大きな一翼を既に担っていると言えます。
 さらに憲法の問題があります。憲法9条がなくなれば、まさに日米の統合軍が世界に合法的に派遣され、戦争に参加していくことになります。今、近隣諸国との間に平和をめぐる多くの問題が起こってきていますが、平和的な外交努力は十分とは言えません。近隣諸国から見て、日本は戦争準備しているのではないか、そのような不安感を与える政策となっています。
 一般市民の中にも強い危機意識がありました。平和を求め、切々と訴える多くの声に私たちは出会いました。この署名は、その1筆1筆に市民1人1人の平和を願う熱い思いが込められています。
 しかし、市長の意見書は、市民の平和を願う声を深く受けとめたものではありません。市長は、その意見書において、無防備地域宣言の4要件をすべて満たすことが必要であり、戦闘員の撤去等に関する権限を有していないため実行できないと、その理由を述べています。戦闘員の撤退や軍用施設の撤去等の権限を地方自治体が有している国がどこにあるのでしょうか。軍は、どこの国でも統括管理されており、政府が指揮権を有しています。ジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書59条は、地方自治体には軍事的な指揮・命令権がないという前提で、なおかつ無防備地域宣言できると述べているのです。市長は、ジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書59条を間違って解釈し、かつ、私たちが直接請求した平和無防備条例案を曲解しています。
 平和無防備条例案を説明したいと思います。
 私たちの条例案第2条は、ジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書第59条の無防備地域に関する定義を述べているだけです。だから、「定義」と書いてあります。この定義を否定するということは、ジュネーブ条約を否定することになります。日本国政府は、ジュネーブ追加議定書を批准したのですから、守る義務があるわけです。
 ジュネーブ条約は赤十字国際委員会の注釈と一体のものです。注釈書2283は、「原則的に、宣言は、宣言の条件に従っていると保障することのできる当局によって送られなければならない。一般にはそれは政府自身であるが」と述べ、普通は政府が行うべきだと述べています。その上で、「困難な状況においては」「町長、市長、知事といった地方民生当局から出されることさえあり得る」と明示しているのです。これは注釈書であって、守らなければならないものです。注釈書を否定することは条約違反です。
 私たちの条例案を説明しますが、ジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書の定義のこの4要件に関しては、第5条(市の責務)の1に記載しています。4要件「を満たす適切な措置を講ずる努力を不断に行う」ということになっています。いわゆる努力義務を述べただけです。条例案第5条の2と3は、市川市自身が戦争行為や戦争協力を行わないということである。今、市川市上空を自衛隊機が飛来し、そして自衛隊員が市川市を通過しています。そのことを拒否せよと要求しているのではないわけです。
 さらに、実際の無防備宣言は、第4条に述べているとおり、「戦時あるいは戦争の恐れが明白な時」に「通告する」ということにしています。これは起こり得ないと思いますが、戦争の相手国が上陸してくる事態のときに無防備宣言を通告して、生命と財産を守る施策を行うと約束することです。
 この平和無防備条例案は、市民の平和的生存権を第一義とした不断の平和施策の努力を行い、たとえ不幸にも戦争状態になったとしても、そのときには住民の生命と財産を第一義とする無防備地域宣言を行うということです。市川市は戦争協力しない平和都市であると宣言することです。だから、今、防衛・安保に関する国の施策や法律と直接的にこの条例が抵触することはないのです。平和無防備条例案は、地方自治体として当局がなすべきことであり、反対すべき根拠はありません。この国際人道法の勝手な解釈は、特に許されないのです。
 日本は第二次大戦で中国、朝鮮、アジア地域で多くの住民、非戦闘員を虐殺しました。その日本が今、ジュネーブ条約を否定するということは認められないことです。逆に考えれば明らかになります。政府見解は、日本が他国にもし攻撃したら、他国の地方自治体が無防備地域宣言を行ったとしても、そんな権限はないんだと言って地方自治体に攻撃を続けるということを日本政府は言っているのです。こんなことが許されるわけではありません。市川市は議会にこの意見書を提出したのですから、意見書を赤十字国際委員会に送付して、ジュネーブ条約に合致しているかどうかを問うてみてください。
 敵軍が上陸し、市川市に迫ったときに、市長はどのように市民の命を守るのですか。最後まで戦えと言うのですか。国民保護法のように、市民を全員県外に避難させるのですか。無防備宣言をする以外に市民の命を守るすべはありません。
 地方自治法14条第1項を持ち出して、無防備地域宣言は地方公共団体の事務に属さないということで同法違反になると言っています。しかし、平和の施策を不断に行い、住民の平和的生存権を第一義とする施策は、地方自治体がなすべき事務ではないのですか。地方自治法第1条の2の地方公共団体の役割と制度策定等の原則は、そのことを述べています。
 以上で陳述を終わります。ご清聴ありがとうございました。深い議論を期待したいと思います。よろしくお願いします。(拍手)
○井上義勝議長 静粛にお願いいたします。
 次に、伊藤精史氏の入場を求めるとともに、発言を許可いたします。
〔伊藤精史条例制定請求代表者入場、登壇〕
○伊藤精史条例制定請求代表者 おはようございます。陳述をさせていただきます。
 請求代表の1人、伊藤精史と申します。昭和10年生まれの70歳です。英語の教員を40年やりまして、4年前に退職いたしました。東菅野に平成元年から住んでおりまして、現在、町の自治会の役員をやらせていただいております。盆踊りだとか運動会だとか、拍子木を持って夜回りをやったりして精を出している日ごろです。また、私は学生時代からキリスト教徒でありまして、地域の教会にも必ず日曜日には出かけております。そこで、私の陳述を最も平均的な市川市民の声だと思って聞いていただければありがたいのです。
 まず、今回、私がなぜ平和無防備運動にかかわったかを簡単に述べさせていただきます。
 私が10歳のときに太平洋戦争が終わりました。戦後の実に伸び伸びした時期に小中高等学校を過ごしました。あの「リンゴの唄」の時代です。大学に入って法律を学びました。経済急成長のころでしたが、新憲法の理想主義的精神を学べば学ぶほど、当時の政治状況との矛盾に悩みました。特に憲法9条があるのに警察予備隊ができ、それが保安隊に、またたく間に自衛隊になっていったのです。政治の現実の前に法が全く無力でした。法律家が憲法9条と現実のギャップを、法解釈という手段で埋めようと四苦八苦していたのには幻滅して、法律の勉強をやめちゃいました。
 さて、戦争末期の私の子供のころ、隣組という近所の人たち同士の組織がありました。バケツリレーで火消し練習をしたり、火ばたきと言って、棒の先に荒縄を縛りつけた火消し道具などでした。そんなものをつくったんですね。しかし、その訓練や火ばたきは東京焼夷弾空襲のときには全く役立たずであったことを知っている方は多いと思います。ですけれども、「防空練習、防空練習」というような近所同士のかけ声、それから「竹やりで、米兵が来たら刺し殺せ」などというかけ声は、私たち下町住民の危機感をあおったんです。子供心にぞっとした経験を覚えております。
 そしてそれは、結局よく考えてみると、戦時体制を推進していくのに効果的であったなと思っております。今、執行されようとしている国民保護法は、まさに地域の戦時体制をつくり上げようとしているのではないでしょうか。自治体住民を戦時体制に組み込んでいくため、市町村に国民保護協議会を設置させ、その計画書をつくらせようとしています。しかも、これは地方議会を関与させないよう、議決を不要とする仕組みをとっております。これは、住民の安全と福祉を目的としている地方自治法の精神を否定するものです。
 さて、署名運動をやっていて多くの人たちに、「無防備ってどういうことですか」という質問をよく受けました。それに対して私は、「戦争はお互いに武器を持つことから始まるんじゃないですか。その武器をこちらが持たないことから始めなければいけないのです」と答えました。「武器を放棄して初めてジュネーブ国際条約が私たちを守ってくれるのです」と答えたのです。それと、「守られる保証はあるんですか」と、また尋ねる人には、世界大戦中のドイツ軍に対するフランスのパリ無血開城のこととか、沖縄の前島では国民学校の校長先生が日本軍の引き揚げを果たしたために米軍の砲撃を免れたという事実をお伝えしたりしました。
 署名運動に対する市民の反応は、私たちの署名が日が進むにつれて大きくなり、ご自分の名前を書き終えてから、頑張ってくださいという声をどんどん聞くようになりました。それほど市民の皆さんが平和、憲法、環境などに強い関心を持っているという手ごたえをいただきました。
 私たちの署名の呼びかけに対する反応の強さは、街頭だけではありませんでした。さきに言いましたように、私は自治会の役員をやらせていただいております。自治会のある日の会合で無防備署名運動の話をする機会をいただき、少なからぬ人たちが署名簿を持ち帰ってくださったのには感激いたしました。自治会というものが上意下達の機能しか持たない組織かと思っていたのは私の誤りでした。
 また、私は教会でも励ましとサポートをいただきました。いつも牧師は説教の中で、今起こっている戦争を、私たちの信仰に深くかかわる問題として取り上げていますし、また、平和のための祈りをいつもしております。今回の署名集めでは、教派を超えて3つの教会の方々からサポートをいただきました。主よ、私をあなたの平和の道具として使ってくださいと祈っています。
 ことし初め、私は年賀状に次のようなことを書きました。「私もおかげさまで元気に古希を迎え、日々平穏に過ごしております。戦後60年の平和のありがたさを身にしみて感じているこのごろです。しかし、一たび目を外に転じれば、私の享受したこの平和な60年間に、世界じゅうでどれほど多くの人たちが戦争のために命を落としたかと思うと、私は自分に天から与えられた、この恵みにどれほど感謝していいかわからないほどです。でも、そのあふれるばかりの恵みに対して、私は一体どれほどのことをしてきたでしょうか」
 砲弾で体の一部を失い血を流しているイラクの子供たちや老人たち、パレスチナとイスラエルにおける連日の惨劇をテレビで見るたびに、人間はどうしてこんなことになっているのかと悲しくなるだけです。武器、兵器などというものが存在しなければ、人間が人間を傷つけ、殺し合うということもできないはずです。これは、人間だけの底知れぬ欲望と憎しみが生み出しているのです。しかし、この欲望や憎しみの心を人間から払拭することはとてもできないでしょう。そうだとなれば、武器、兵器をつくらないこと、持たないこと、持ち込ませないこと、それしか道がないのではないでしょうか。
 この余りにも単純な子供にもわかる真理を出発点としない限り、戦争によって傷つき、殺される人たちが絶えることはありません。この三原則のどれかに反する行為は、それが国家権力であれ、他国の圧力であれ、絶対に許さないことです。私は、自分の命をかけても抵抗しなければならないと決意しています。そうしなければ、その兵器で自分が人を傷つけ、人を殺すのと同じだと考えるからです。
 この兵器廃絶三原則の運動を、みんなが力を合わせてやればできないことはないです。それが今、私たちが取り組んでいるこの平和無防備運動です。難しい問題はたくさんありますが、兵器が人を殺傷するのだから、まずそれを廃絶するという単純な真理から目をそらせてはいけません。自衛のための兵器だとか、国際貢献のための武装だとか言ってはいけません。街頭で署名してくださって、「そうですね。武器があるから戦争になるんですよね」と答えてくれた人たちは、何が真理であるかをちゃんと見抜いていると私は感じました。
 市長さん、議員の皆さん、市民の素朴な気持ちをくみ上げてください。民の声は神の声です。その声の実現が民主主義の第一歩です。本当の民主主義は地方自治から始まると思います。この真実を市川市の力としてください。そして、市川から日本の政治を変革し、世界から戦争をなくしていこうではありませんか。
 ありがとうございました。(拍手)
○井上義勝議長 ご静粛にお願いいたします。
 なお、議長の命令に従わないときは、地方自治法第130条第1項の規定により退場を命じますから、念のため申し上げておきます。
 次に、立花一晃氏の入場を求めるとともに、発言を許可いたします。
〔立花一晃条例制定請求代表者入場、登壇〕
○立花一晃条例制定請求代表者 私は、市川市宮久保に在住する立花一晃です。このたびの市川市平和無防備都市条例制定請求人の1人として、以下の意見を述べ、この請求の趣旨に関して議員の皆様方の理解をいただきたいと思います。
 この1カ月間、署名に参加してくださった1万2,550名の市川市民の皆さんのうち圧倒的多数の方、恐らく8割以上の方は60歳以上の女性と、幼児を連れた若いお母さんたちで、そのほかの署名者も男性の年配の方々が多数であったことに強い印象を受けました。これは、署名可能な対象者のうち、圧倒的多数の方々が、戦争の際、思うように避難もままならない社会的に弱い立場に置かれた方々だということです。
 ここ5年ほどの間に、小泉内閣のもとで日本は、2001年のテロ特別措置法、2003年のイラク特別措置法、2004年の米軍支援法、この法案との関係で、自衛隊の活動に関する法案の改定、2005年の武力攻撃事態法、国民保護法などを成立させてきました。この法律をより徹底するため、各地方自治体の協力義務と、県、市町村各自治体に地方版保護条例を作成することを義務づけています。当市川市においても、今年の9月議会で国民保護協議会条例の制定に取り組む予定であると聞いております。
 国民保護法では、戦争の際に、その保護の責務は自助努力7割、共助2割、公助1割との立場で各地方の保護条例を制定することになっているとのことです。
 以上の点から考えて、有事の際、こうした女性、幼児、高齢者などの社会的に弱い立場の方々がどういう状態に置かれるかは極めて明確であります。第二次大戦後に起こった朝鮮戦争、ベトナム戦争などの軍事紛争において、一般住民の死亡率が9割を超すと言われております。イラク戦争はもちろん、ますます精巧な軍事技術と近代兵器を駆使した戦争では、こうした傾向は一層強まることになると思います。
 私たちが今回提出した平和無防備条例案は、ジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書59条2項に基づく、戦争の際に自国民を守り敵対国からの攻撃を避ける無防備地域を設けることができるという国際条約に基づいています。このことは、憲法の前文及び第9条に定められた平和的生存権を自治体のレベルで保障しようとするものです。同時にこのことは、戦争をしない、起こさせない、つまり国民保護法を必要としない国づくりを市民を中心にした不断の努力によって、その達成を目指すものであり、決して戦争を前提にした条例を意味するものではありません。憲法9条が目指す崇高な目標を真に具体的に生かす道であります。
 イラクに対してとったブッシュ政権の政策は、大多数の国々の反対、警告や国際法を無視した一方的先制攻撃戦略によるものであり、これまでの人類の英知たる国際法のむなしさを当初印象づけました。しかし、ヨーロッパを中心にして多くの国々から、大義のない国際法を無視したやり方に対し厳しい批判が出され、アメリカ国内からもブッシュ政権のこうした政策に反対の意見が強まりつつあります。やがてイラク戦争の結末は、ベトナム戦争に似た状況を迎えることになるだろうと私は確信しております。
 いずれにしても、ますます強まるグローバリゼーションのもと、国家間の相互の依存関係が強まる一方で、紛争も起こります。これらの問題を解決するかぎは武力によるものではなくて、話し合いによる解決です。そして、そのときの話し合いの基準が国際法であり、その中心的組織が国連です。ジュネーブ条約はベトナム戦争を初め、戦後の紛争を解決する国際法として大きな役割を果たしてきたことは、皆様よくご承知されていることであります。
 戦時下において地方自治体たる市川市が、市川市民の安全と福祉の直接擁護者として、その当然の機能を最大限に発揮できる道が求められています。市民の真の保護は国民保護法ではなく、ジュネーブ条約に基づく平和無防備条例です。この道こそ、日本が世界に誇る憲法9条に基づく平和外交の推進とあわせて、その力を発揮できる道であることを強調したいと思います。
 最後に私は、平和と環境保全はコインの裏表との信念で、東京湾にわずかに残された干潟、三番瀬の保全と平和無防備条例制定など平和問題にかかわってきた1人として、議員の皆様に、戦争がいかに大きな環境破壊をもたらし、人類の未来、子供たちの未来に大きな負の遺産を負わせるかに関し、ご理解いただきたいと思います。
 ベトナム戦争時におけるアメリカ軍による枯れ葉作戦に象徴される環境破壊は恐るべきものがあります。最近のイラク戦争においても、例えば劣化ウラン弾による環境破壊は、イラクの子供たちへの放射能障害による白血病の多発など、今後にその恐ろしい影響が残るなど、まことに深刻であります。こうした問題を避ける道の1つが平和憲法と平和無防備条例です。
 以上の立場から、千葉市長の意見について私の意見を述べさせていただきます。
 現在、市川市はジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書59条2項による4条件を基本的には満たしていると考えます。したがって、この市議会において私たちの請求に賛成する決議をすれば、今後、国が市川市に戦闘員、移動可能な兵器及び軍用設備を配備しようとしても、市川市はこの決議を受け入れていることを根拠に、これらの要求を拒否する国際法に基づく十分な根拠を有していると思います。
 千葉市長は、国の防衛に関することは国の専決事項であるから、地方自治体にこの条約を受け入れることはできないとの見解に立っているようですが、これは極めて不十分な認識に基づく見解です。
 私は、昨日、外務省に次の2点を問い合わせました。1、ジュネーブ条約第59条第2項の正式な国際的名称、2、この条約の適応に関し、国の権限と地方条例の関係についてです。外務省人権人道課の回答によると、正式な国際的名称はNon-Defended Localities、つまり地域を守る条約なのです。この条約の適用は、我が国では国を第一義的対象と考えているとのことですが、戦争時の状況などを考慮し、例えば京都府を指定するとか、ジュネーブ条約第59条第2議定書を受け入れている地域を指定することは、当然あり得るとの回答でした。
 私は、この正式名称から言っても、この条約の基礎になったであろう第二次大戦中、ナチによるパリの無血開城などを考えて、この59条第2項を決議している地方自治体の要請を国が無視することは、この条約を批准した精神を全く顧みないことになると思います。
 市川市は、他の地方自治体に先駆けて、早々と1984年、非核都市宣言を発表し、平和を願う市民の声にこたえた自治体として、今回のこの私たちの平和無防備条例の制定請求に真摯な議論を交わし、1万1,119筆に込められた市川市民の平和を願う切実な声にこたえていただくことを心より希望して、私の陳述を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○井上義勝議長 以上で条例制定請求代表者の意見陳述を終わります。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。
 小岩井清議員。
○小岩井 清議員 議案第1号について、これから質疑をいたしたいと思いますが、今、3人の方から意見陳述をいただきました。意見陳述者に質疑ができないのは極めて残念でございます。意見書を付した市長に質疑をするということでございますので、意見書に基づいて質疑をさせていただきますけれども、極めて残念だなというふうに思っていることを最初に述べたいと思います。
 そして、質疑通告を3項目いたしてございますけれども、その質疑に入る前に、私の平和に対する考え方を述べた上で入りたいと思います。
 私は、42人の議員の中においても、数少ない戦中、要するに戦争中に生まれた、その1人だと思っております。そして、私が市川市民になった日は1945年の3月10日でございます。この日はどういう日か。東京大空襲の日でございます。私は東京都の江東区に住んでおりまして、当時、10歳になるちょっと手前ですから、9歳ですね。3月9日の夜半から、B-29というアメリカの爆撃機による焼夷弾の雨嵐と降るような、町が一斉に火がつくという状況を思い出してください。逃げ惑う、あるいは悲鳴、そういう中で、やっと小さな貯水池の中に身を沈めて生き長らえたんであります。私の家庭は、祖父母がそこで焼死いたしました。兄弟は当時5人おりまして、一番下の弟は貯水池の中で凍え死にました。その中で、とぼとぼと市川までたどり着いたのが昭和20年、1945年の3月10日でございます。市川市を愛する気持ちが人一倍強いのは、そういう市川市民になった日が、東京大空襲でやっと命長らえたという日だということで、市川市を愛する気持ちは人一倍強いんであります。そういう考え方の中で質疑に入りたいと思います。
 私は、1990年から1期、3年5カ月衆議院議員を務めました。幸いにして予算委員会の委員、いわゆるテレビで映る第一委員会室、あそこで外交防衛問題についても質疑をしました。市川市議会に戻りまして、市民に直結する行政の問題を質疑いたしまして、まさか外交や安全保障の問題をこの場で質疑するとは思いもよりませんでしたけれども、今回、その機会を得ましたので、質疑をさせていただきたいと思います。
 最初に、ジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書第59条第2項と国、地方公共団体のおのおのの権限との関係についてであります。
 これはやはり法治国家である以上、国、あるいは地方公共団体は条例を制定することができるということが地方自治法に出ておりますけれども、その法律の範囲内で条例をつくるということになりますから、意見書の中では、こういうことが言われていますね。地方自治法第14条第1項の規定に抵触するおそれがある。第14条の第1項を見てみました。地方自治法第3章条例及び規則、第14条条例、罰則の委任「①普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」とあります。この中で特に問題があるのは、「法令に違反しない限りにおいて」とありますね。今回、直接請求で出された無防備条例が、「法令に違反しない限りにおいて」と言うんですけれども、違反するということですから、どの部分が違反するのか、この点について最初にお伺いをいたしたいと思います。
 以上が国、地方公共団体のおのおのの権限との関係についてであります。
 2点目は、条例ということになれば実効性がもちろんあります。しかし、市川市は核兵器廃絶平和都市宣言、これは国際法並びに国内法に基づいて制定をされて宣言されているんでしょうか、あるいは精神的なものなんでしょうか。その経過を含めて最初に伺った上で、これは再質問の中でいたしたいというふうに思います。というのは、平和を愛する気持ちにこたえていくということは必要だというふうに思います。したがって、法令から逸脱しているとしても、この市川を平和な町にしたいという素朴な市民の気持ちにこたえていくというのは、行政の責任者である市長、あるいは市民から選ばれている私たち議員としては大事なことではないかというふうに思っております。その面で、条例と宣言の実効性について、それぞれ答弁いただきたい。
 3番目は、1万1,119人の方が署名をされた。これは非常に重い。この重みは理事者も議会も感じなきゃいけないだろうと思います。そして、先ほど陳述人の皆さんからもご発言がありましたけれども、市川を平和な町にしたいという素朴な気持ちだと思うんですね。ジュネーブ協定、あるいは国の法律、地方自治法と条例の関係ということを精査しながら署名したんじゃないと思うんですよ。素朴な平和を愛する気持ちで署名されたんだと思うんです。ですから、条例を否決するとか可決するとか、そういう次元だけの議論だけではなくて、もっとこの気持ちを大事にする方法を考えなきゃならないんじゃないかというふうに思っております。
 かつて直接請求について、特別職の報酬に関して、値上げに対して直接請求が出たことが2度ございます。1回は、私がまだ20代のころでありまして、この直接請求の事務局長をやりましたけれども、このときには、特別職の報酬の条例については、一たんもとへ戻して、またやり直した。2回目は、30年前に、私が市議会の副議長のときでございましたけれども、これまた特別職の報酬についての直接請求が出ました。これはやはり署名された方の気持ちを大事にするということで議論をいたしまして、直接請求は否決いたしましたけれども、決議をしまして、まず、常設の報酬審議会をつくる。そして、建議権をその報酬審議会に持ってもらう。さらに、建議が出た場合には、議会はそれを尊重して審議をするということを決議として、その署名者の気持ちを吸い上げたわけですね。否決はしたけれども、気持ちを大事にしたということでございますので、市長の意見書については、この条例案には賛成しかねるとありますけれども、今私が申し上げたように、1万1,119人の人たちの平和を愛する気持ちをどう受けとめるか、どう市長の態度にあらわすかということは必要ではないんですかね。ですから、賛成しかねるけれども――賛成しかねるというのは、法の中からはみ出しているからということなんでしょう。ですから、その気持ちにどうこたえるかということを最後に市長から伺いたいというふうに思っております。
 また、議会は議会として、その気持ちにこたえる意思表示をすべきだと私は思っております。私、総務委員会の委員でございますから、これは総務委員会の中で、その方法については発言をいたしたいと思っております。
 以上です。
○井上義勝議長 答弁を求めます。
 総務部長。
○本島 彰総務部長 ご質問にお答えさせていただきたいと思います。
 まず、第1点に入る前に、意見書そのものはジュネーブ条約を否定するような、そういった趣旨で述べられたものでないということを、まず最初にお断りさせていただきたいと思います。まず、ご質問のジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書と国、地方公共団体それぞれの権限との関係でございますが、このジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書につきましては、ご案内のように平成16年の国会において締結について承認を求める案件の審議を経て、同年8月31日に締結されました。国際条約としてのジュネーブ諸条約の締結に際しましては、条約は外交関係を所管する国に権限があることから、国会の承認を得て条約を締結したものであり、この締結によりまして、国は条約を誠実に遵守する責務を負っております。また、国と地方公共団体の事務役割分担につきましても、今ご質問者からお話しありましたけれども、地方自治法第1条の2第2項におきまして、「国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動」等については、「国が本来果たすべき役割を重点的に担う」と規定されております。他方、地方公共団体の役割につきましても、地方自治法第1条の2第1項に規定されておりまして、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うもの」と定められております。そして、地方公共団体の条例の制定権につきましては、地方自治法第2条第2項に、「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する」と規定されております。また、同法第14条第1項には、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」と規定されております。
 今度はご質問の、「法律に違反しない限りにおいて」ということでございますが、事態対処法、それから国民保護法、あるいはまた自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等一部改正法の中に、地方公共団体として国、他の地方公共団体などと連携して地域並びに住民の生命、身体、財産を保護する責務があるとか、あるいはまた国民保護法でございますが、武力攻撃事態等においては、あらかじめ作成した国民保護計画に基づき、みずから国民保護のための措置を実施するというような地方公共団体の責務が述べられております。こういったことに規定されておりまして、地方自治法の第14条で、無防備宣言することによりまして、今の法令に違反する可能性があるということから、今回の意見書になったものでございます。
 また、本提出の条例案につきましては、国の事務であること、そして地方公共団体の事務の範囲を超えていることから、市川市が制定することはできないものと考えております。
 次に、第2点目でございますが、請求条例案の実効性が担保できるかということ、また、国際法規の裏づけによらない精神的な宣言として宣言ができないかというようなことでございますが、まず、条例案の実効性につきましては、仮にこの条例が制定されたといたしましても、意見書に記載しておりますが、本市が無防備地域宣言を行ったといたしましても、ジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書第59条第1項の規定による攻撃が禁止される地区としての特別の保護を受けることはできないものであり、何ら実効性を有するものではないというふうに判断しております。また、直接請求条例案の趣旨を生かした市川市独自の理念的な無防備に関することにつきましても、宣言とすることはできないものと考えております。なお、新たな平和に関する宣言をするということについては、本請求と別な手続が必要となると考えております。
 3点目の、市民の気持ちにどうこたえるかということでございますが、今回の条例の提案に際しまして、本市の有権者の50分の1を超える1万1,119名の方々の署名があってなされております。平和への思いがあらわれたものと認識はしております。すべての方々が願っております平和につきましては、本市といたしましては、昭和59年に核兵器廃絶平和都市宣言を行っております。こういった宣言をしたことに伴います本市の責務といたしましては、これまでも平和に関するいろんな行事等を機会あるごとに行ってきたところでございます。これからもたゆむことなく平和宣言の理念を伝えていくという所存でございます。
 以上でございます。
○井上義勝議長 小岩井議員。
○小岩井 清議員 答弁をいただきました。今の答弁の中で、意見書については、ジュネーブ条約を否定して意見書を出しているわけではないということの発言がありましたけど、それは確認をしておきたいと思いますが、再答弁の中で述べてください。ということは、ジュネーブ条約は否定はしていないけれども、地方自治法第14条の1項に、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるということで、違反をするという事例を今幾つかの法律を挙げましたよね。ということになって、仮にこれが制定をされたとしても、実効性は伴わないだけですから、この条例は無効ということになりますか。実効性を伴わないだけなのか、あるいは法律から合致しないとすれば、この条例は無効になるのか。可能性があるというふうに言っているんですけれども、明確に違反という考え方は出ていませんね。可能性ですか、違反なんですか、どっちなんですか。それを答えていただきたいというふうに思っています。
 それから、国は条約を遵守する責務を負っている、これは当然のことですよね。ですから、その辺のところは一応答弁として承っておきますが、否定して意見書を出していないということに関連して幾つか申し上げました。
 それと、宣言ですけど、宣言というのは精神的なものですよね。核兵器廃絶平和都市宣言だって、これは法の裏づけも何もないでしょう。ただ、精神的に……。ただし、これは核だけ、核兵器だけに限定しているんですよ。核兵器だけですから、非核でもないんだね。とすれば、市民の平和を愛する、あるいは平和を希求する気持ちにこたえるには、核兵器廃絶平和都市宣言だけでは不十分なんですよ。平和全般をにらんで宣言をするということが、この気持ちにこたえることになるんじゃないでしょうか。ですから、平和を守るということについて、市民の期待にこたえるということについては、否定する人はだれもいないと思いますし、市長も当然そうお考えだと思っております。その1万1,119人、あるいは署名の機会がなかった人たちもいると思いますから、多くの市民の平和を求めることについてこたえるすべ――宣言というのもありますよ、あるいは市長が談話を出すということもありますよ。その辺のところはどうなりますか。議会の対応については総務委員会の中で私は発言したいと思っております。
 以上です。
○井上義勝議長 総務部長。
○本島 彰総務部長 まず、ジュネーブ条約についてでございますが、これは国が締結しておりまして、その経過も調べましたところ、ジュネーブ条約は国が締結しておりますし、私どもも地方自治体としてジュネーブ条約を否定するということじゃなくて、ジュネーブ条約が締結されている前提に立って判断をさせていただいた次第でございます。
 それから、自治法に触れるかどうかということでございますが、私どもは法律の条文を解釈いたしまして、先ほど言いましたようないろんな法令に違反する可能性があるということの判断をいたしました。これについては、これはまだ条例を出したわけではありませんので、法令の解釈からそういう可能性があるという表現をさせていただきました。
 それから、先ほども答弁させていただきましたが、平和を願う市民の方々の気持ちについては十分認識しておりまして、今回の条例案につきましては、国の権限を侵すような、あるいは地方自治体の権限ではない条例を定めることについては賛成しかねるという結論に達したわけでございます。
 ご質問の市川市の59年に行いました核兵器廃絶平和都市宣言でございますが、核兵器だけではなくて、その当時の議会において全会一致で可決した内容は、私たち市川市民は、生命の尊厳を深く認識し、非核三原則が完全実施されることを願い、核兵器の廃絶と軍縮を全世界に向かって訴え、恒久平和を実現することを決意するという旨がございまして、核兵器の廃絶だけじゃなくて、生命の尊厳、あるいは恒久平和の確立という願いも込めて全会一致で可決されたというふうに承知しておりまして、それが市川市の宣言となったものというふうに理解しております。この市川市で核兵器廃絶平和都市宣言を行った趣旨というのは、単なる核兵器だけじゃなくて、今言いましたように恒久平和の確立を願いながらも、平和事業についても今まで取り組んできた所存でございます。
 以上でございます。
○井上義勝議長 小岩井議員。
○小岩井 清議員 私も地方自治法第14条の第1項について、提出された条例が抵触するんではないかということでいろいろ検討をしてきました。平和に対する考え方、ですからこの署名については、代表の方の意向も、署名者の意向も十分理解をするし、私は全く同じ気持ちなんですよね。しかし、法治国家の中における地方議会ですから、今、大変悩みに悩んでいるところでございます。態度決定は委員会までにしたいというふうに思っておりますけれども、そのように考えています。
 それから、今、核兵器廃絶平和都市宣言、これは恒久平和ということが入っているということ。とすれば、恒久平和宣言を出したらどうですか。市川市恒久平和都市宣言ですね。そういうふうに考えますけれども、最後に市長に市長のお気持ちを聞いておきたいんですよ。お答えいただけませんか。
 以上です。
○井上義勝議長 答弁を求めます。
 市長。
○千葉光行市長 総務部長からも答弁させていただいておりますけれども、まさに核兵器廃絶平和都市宣言も恒久平和を願う市民の願いであります。恒久平和を願う意味から、この廃絶宣言をしたわけでありまして、法令に違反しないということであります。そういう意味から、今度の場合の、恒久平和を願う気持ちがそこにあらわれている1万1,119名の方々の気持ちというものは、とうとい気持ちであるということだけは理解しております。
 以上であります。
○井上義勝議長 小岩井議員、よろしいですか。
 以上で通告による質疑は終わりました。
 これをもって質疑を終結いたします。


○井上義勝議長 ただいま議題となっております議案第1号市川市平和無防備条例の制定については、お手元に配付いたしてあります議案付託表のとおり所管の委員会に付託いたします。
 この際、暫時休憩いたします。
午前11時16分休憩


午後4時48分開議
○井上義勝議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。本日の会議時間は議事の都合により延長いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上義勝議長 ご異議なしと認めます。よって本日の会議時間は延長することに決定いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
午後4時49分休憩


午後5時6分開議
○井上義勝議長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 お諮りいたします。この際、議案第1号市川市平和無防備条例の制定についてを日程に追加し、議題とすることにいたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井上義勝議長 ご異議なしと認めます。よってこの際、議案第1号市川市平和無防備条例の制定についてを日程に追加し、議題とすることに決定いたしました。


○井上義勝議長 議案第1号市川市平和無防備条例の制定についてを議題といたします。
 本案に関し委員長の報告を求めます。
 総務委員長、宮田かつみ議員。
〔宮田かつみ総務委員長登壇〕
○宮田かつみ総務委員長 ただいま議題となりました議案第1号市川市平和無防備条例の制定について、総務委員会における審査の経過並びに結果をご報告申し上げます。
 本案は、平成18年5月23日、地方自治法第74条第1項の規定に基づく市川市平和無防備条例の制定の請求を受理したので、同条第3項の規定に基づき意見を付して議会に付議されたものであります。
 委員会の審査の過程で参考人を招致することが全会一致で可決され、参考人を招致し、意見陳述を行い、その後、参考人に対し質疑を行った次第であります。
 まず、参考人に対する質疑応答のなされた主なものを申し上げますと、まず、「子供から大人まで、市川市民46万人は恒久的平和を願っている。しかし、本条例案を制定しても実効性が伴わないと思われるが、このことについて、参考人はどのように認識をしているのか」との質疑に対し、「確かに実効性を伴うのは第4条の『無防備地域宣言』を行ったときである。『無防備地域宣言』を行ったことにより効果があるのか、ないのかなどの議論にならないために、象徴的な意味での宣言ととらえている」との答弁がなされました。
 次に、「地方自治法第14条第1項に、『法令に違反しない限りにおいて』地方公共団体の権限に属する『事務に関し、条例を制定することができる』とあり、本会議における答弁では、抵触する理由として、武力攻撃事態対処法、国民保護法等が挙げられているが、参考人は抵触すると考えているのか」との質疑に対し、「確かに抵触する理由として武力攻撃事態対処法、国民保護法等と答弁されていたが、条例を制定するとはいえ、実質的に宣言であるので、法令に抵触するものではないと考えている」との答弁がなされました。
 次に、理事者に対する質疑応答の主なものを申し上げますと、まず、「意見書に『法に抵触するおそれがある』とあるが、具体的に何を指すのか」との質疑に対し、「まず、地方自治法第2条第2項で、地域の事務及びその他の事務で法律または政令により処理することとされている。また、武力攻撃事態対処法第5条において、市の責務として住民の生命、財産を保護するため、国及び他の機関等と協力し、必要な措置を実施する責務がうたわれており、さらに、国民保護法第3条第2項では、国が定める国民保護のための措置の実施に関する方針に基づき、当該区域において関係機関が実施する国民保護のための措置を推進する責務がうたわれている」との答弁がなされました。
 次に、「すべての市民は恒久的平和を願っている。市として意思表示をするには、恒久平和都市宣言を行うなども1つの手段として考えられるが、本条例を制定しなくても、現状で市民の平和、安全を守っていけると思う。市はどのように考えているのか」との質疑に対し、「本市は昭和59年に核兵器廃絶平和都市宣言を行って、恒久平和もうたわれており、これに基づき平和の施策もさまざま行っている。市の恒久平和を願う姿勢は明らかとなっているので、本条例を制定しなくても、市民の平和、安全は保たれるものと考えている」との答弁がなされました。
 次に、「意見書には、本条例を制定した場合、地方自治法第14条第1項に抵触する恐れがあるとしているが、実際に抵触すると考えているのか」との質疑に対し、「法に抵触するしないは法律の解釈であり、最終的には裁判所が判断を下すことであるが、行政としては限りなく法に抵触するものと思っている」との答弁がなされました。
 これに関連し、「仮に条例が可決され、裁判所が判断を下すこととなった場合、原告はだれになるのか」との質疑に対し、「再議等の手続を経ても可決と決した場合は、市長が原告となる。意見書の趣旨にのっとり厳正に対処する考えである」との答弁がなされました。
 本委員会といたしましては、採決の結果、賛成者がなく否決すべきものと決しました。
 以上、ご報告申し上げます。
○井上義勝議長 これより委員長の報告に対する質疑に入ります。質疑はありませんか。――質疑がありませんので、質疑を終結いたします。
 これより討論に入ります。
 討論はありませんか。討論のある方は挙手願います。議長から賛否を伺いますので、そのままお待ちください。
 岩井議員、賛成ですか、反対ですか。
〔岩井清郎議員「反対」と呼ぶ〕
○井上義勝議長 小泉議員、賛成ですか、反対ですか。
〔小泉 昇議員「賛成」と呼ぶ〕
○井上義勝議長 岩井議員、どうぞ。
〔岩井清郎議員登壇〕
○岩井清郎議員 新政クラブ第1、第2、第3並びに緑風会を代表いたしまして、議案第1号市川市平和無防備条例案に対しまして、反対の立場で討論をさせていただきます。
 まず、本条例制定案の審議に当たり、私どもは皆平和を願う心を持ち、そして市川市を愛する者として、条例制定案に賛同された多くの市民の方々と恒久平和を希求する思いは同じものであり、また、直接請求という多くの市民の願いを重く受けとめながらも、無防備地域宣言の真の意味を深く理解した結果として、これは市川市の条例として制定されるべきではないとの思いをいたし、本条例案に対しまして、反対の立場で討論を行うものであります。
 市内各所で平和な町をつくるための条例を制定するという直接請求の署名活動が行われ、配られたパンフレット、あるいは提案条例の中でも、4つの条件を満たせば攻撃がされないと書かれています。市議会の議決を経て条例が制定され、市川市が宣言すれば、本当に攻撃されないのでしょうか。
 そこで、条例案の中心とも言うべきジュネーブ条約について、特に無防備地域宣言について調査研究を進めると同時に、この活動している条例をめざす市川の会の本意としているものが何なのかを理解しようと努めてまいりました。
 まず、国際人道法と言われるジュネーブ条約、これは皆さんご承知のとおり、平和条約というものではなく、戦時においても守るべきルールを定めたものであります。そして、犠牲を最小限とするとともに、被害者を保護することを大きな目的としています。ですから、戦争が起きていない平時を想定した条約ではありません。署名を収集する際には、その点を十分に理解されるよう説明する必要がありますが、署名活動を見る限り、十分な説明をしていないと感じたのは私ばかりではないと思います。
 次に、無防備地域は何かという最も重要な内容が、同59条第2項に記されているにもかかわらず、市民への説明はおろか、条例案からも抜け落ちております。その内容は、だれが、いつ、どのような状況下で宣言ができるかというものであります。まず、だれが宣言できるかについては、適当な当局とされており、さらに、赤十字国際委員会の解説書には、この当局とは政府であるとされています。日本政府が存在している状況のもとでは、地方公共団体が無防備宣言を出すこと自体ができないのは当然です。また、いつ宣言ができるかについては、相手国の軍隊が接触、または包囲されている居住地区となったとき、つまり切迫した事態になって初めて宣言ができるとされています。さらに、何が求められるかということについても、相手国、軍隊が占領するために開放するとあり、これは市川市に接近、あるいは包囲した相手国の軍隊を進駐させるために市川市全域を開放し、相手国の軍政による統治を受けますよということです。そして、4つの条件を守り、決して抵抗はしませんという極めて重要なことが書かれています。これらの重要事項についても、市民には伝えられていません。
 特に市民にとって直接かかわる占領のことは一切触れず、平和のための条例の署名と強く印象づける内容となっております。署名を集める人たちは、このような占領という重要な内容を説明しないで、平和のために署名をと呼びかけていました。少なくとも私たち会派の議員に市内で署名を求めてきた者からは、一切十分な説明はなされませんでした。占領されることを条件に無防備地域宣言をするということを知りながら、それを説明せず署名していたこと、これは市民への納得いく説明からはほど遠いものと言わざるを得ません。確かに法的な手続はなされていますが、このような都合のよい部分だけを条例案として議会に提案してきたことに対しましても遺憾に感じております。
 次に、提案された条例案について、仮に可決された場合に、市川市としてどこまで実現が可能かを考えてみました。まず、第2条(定義)には、無防備地区として宣言することができる4つの条件の中、すべての戦闘員の撤去、すべての兵器や軍用設備の撤去のほか、住民による敵対行為や活動などが行われないよう、すべてを満たす必要があるが、市の権限が及ばない部分が含まれています。これを第5条では(市の責務)としているほか、例えば管制権限を持たない航空機の移動などまでも規定しています。このように、随所に市川市が実行不可能なことまで規定しております。
 また、条例案全体として、都合のいい部分だけを抜き出し、並べているというふうにも受けとられ、随所に多くの矛盾が見られる点を幾つか申し上げます。
 まず、第4条にも「戦時あるいは戦争の恐れが明白な時」云々とあります。この「戦争の恐れが明白な時」つまり戦争状態に陥っていないとき、相手国になるであろう国に対して市川市が無防備宣言をするということは、戦争を誘発する行為であり、平和を願うとする本条例の趣旨とは反対の行動を規定しております。この点は、条例案の内容から大きく矛盾して容認できるものではありません。
 次に、第4条として宣言の通告、そして付則では国際連合、その他の国、いわゆる全世界の各国への通知が規定されています。まず、第4条の通告を、ジュネーブ赤十字国際委員会を通じて相手国及び日本国政府に通告するとありますが、本末転倒です。なぜならば、まず条約第59条に規定している各種条件を確実に遵守できる適当な当局について、条例案では市川市が宣言主体になり得るという前提に立っています。しかし、市川市が赤十字国際委員会に無防備地域宣言をし、この委員会を通じて日本政府に通告するということはあり得ません。つまり、赤十字国際委員会が日本政府に通知をするということは、日本政府が存在する状況にあると想定されているにもかかわらず、宣言主体である政府を無視して赤十字国際委員会に宣告をすることは認められていません。そして、無防備地域宣言をだれに通告するかは、赤十字国際委員会ではない。相手国に伝えるのです。条約第59条第4項にはっきり明記されております。この点でも、条例案第5条は条約と矛盾しております。
 また、付則についても、公布後速やかに全世界の各国に知らしめるとありますが、先ほどから申し上げている矛盾に満ちた内容を知らせてよいのか疑問であり、実行すべきではありません。
 以上の諸点から、この市川市平和無防備条例案を市川市が制定すべきではないと考えます。そして、何よりも市川市が万が一にも無防備地域宣言をするということになれば、侵略者に対して、市川市は無防備、無抵抗だから、攻めることなく進駐できると宣言するようなものでもあります。このような宣言をした場合、市川市に対し全国の自治体や国民による日ごろからの相互協力が阻害されることとなると考えられます。このようなことで果たして市民が愛する町と家族を守れるのでしょうか。私どもはそうは思いません。市川市を愛する者として、この条例案に賛成するわけにはいきません。
 最後に、請求者代表から委員会において、本条例は宣言という意義づけであるので、法に抵触しないと考える旨の発言がありましたが、一方、理事者からは、本条例案は限りなく法に抵触すると認識しているとの旨の答弁がありました。このような状況のもとでは、議会人として賛成することはできません。これまで直接請求という重みのある条例案として賛意を持ってこられた議員の皆様、また、署名をされた市民の方々においても、矛盾に満ちた条例であり、可決すべきではないということに納得していただけるものと思います。
 私どもは、市川市民ともども強く恒久平和を願うことを申し上げつつ、本条例案につきましては、反対を表明する次第であり、もって反対討論とさせていただきます。
○井上義勝議長 次に、小泉議員。
〔小泉 昇議員登壇〕
○小泉 昇議員 私は、市民の直接請求による第1号議案市川市平和無防備条例に賛成する立場で討論を行います。
 最初に、地方自治法第12条、74条の規定に基づく住民の直接請求運動は、ともすれば首長や議会と住民の結びつきが希薄になりがちな現代の社会において、市民が選挙の投票以外で直接政治に参加できる機会であり、市政を活性化する可能性を秘めた運動であると考えております。本日もこのように朝からたくさんの市民にも参加をしていただき、そして議会の中で多くの平和に関する議論が闘わされたこと自体に大きな意味も潜んでおります。市長選挙を初めとする各種の選挙の投票率が低い市川市にとっては、また格別の意味があるのではないかと思います。また、この条例に対して、市長がどのような意見を付し、議会でどのような審議がなされ、どのような結果になるかは、多くの市川市民や他の自治体の住民も関心を持って見守っています。
 無防備地域宣言条例の制定直接請求運動は、以前にも幾つかの自治体で取り組まれましたが、2004年の第159国会の承認を経て、日本政府がジュネーブ条約第Ⅰ追加議定書を批准したことをきっかけに、北は北海道から南は沖縄に至る各地で運動が行われ、現在進行中の自治体もあり、本日の市川市の結果を見守っているわけであります。
 まだ寒さの厳しかった3月18日にスタートして、4月17日までの1カ月間、雨の日も風の日も1日も休むことなく、市川市を戦争の協力を拒む都市にしよう、私たち市民が戦争の加害者にも被害者にもならないよう平和無防備条例をつくり、他の自治体にも広め、世界に平和のネットワークを広げていこうと訴え続け、直接請求実現のための署名活動が続けられました。この間、たくさんの市民がそれぞれの平和への思いを持って運動にかかわりました。結果は、請求に必要な有権者の50分の1、7,530人を大幅に上回る1万2,567人分の署名が集まり、選管の審査を受け1万1,119筆の署名が有効と認められました。
 私は、運動を支えられた市民、署名に協力された多くの市民に対し敬意を表し、1筆1筆に込められた平和への願いを大切にしていかなければならないと思っています。
 ところで、市川市と関係が深く、文化振興財団の理事長をしております作家の井上ひさしさん、この方は、長く北国分にも住んでおられましたが、今、九条の会のアピールを出した9人の1人です。この井上ひさしさんが、無防備平和条例の運動に対して激励のメッセージを送ってきております。余り長い文章でもないので、ちょっと紹介をさせていただきます。
 アメリカ国防総省は2001年9月の段階で、国外に少なくとも715カ所の軍事基地が存在することを認めていますが、実際の数はこの3倍には達しているはずです。つまり、アメリカは基地帝国なのです。そして、私たちの日本はこの基地帝国に見事なまでに組み込まれてしまいました。これに対抗する方法は1つしかありません。それは、日本国憲法の根本原理と国際法に基づいた無防備地域拡大運動です。皆様が取り組んでいらっしゃる無防備地域宣言の波は、全世界、そして全地球を覆って基地帝国を圧倒し去るときまで、それぞれの地域に根を生やして頑張っていきましょう。
 このようなメッセージを寄せていただいております。
 次に、私が無防備平和条例の成立にこだわり続ける個人的な背景は幾つもあるわけですが、その1つは幼児期の戦争体験であります。第二次世界大戦が勃発した1939年に生まれ、戦争の末期には空襲警報のたびに防空ずきんをかぶり防空壕に逃げ込みました。最終場面では、B-29が珍しく日本の高射砲で、私の住んでいる町の上空で撃ち落とされて、ばらばらになって、そのプロペラが私の隣の家に落ちました。それは恐い体験でありました。隣近所や親戚でも戦死者がふえ、悲嘆に暮れました。敗戦の翌年、小学校に入学しましたが、そのころは極度の食糧難で、毎日飢えに襲われていました。学校の朝礼では何人もの生徒が貧血で倒れるのが普通でした。
 戦争で多くのとうとい命が犠牲になった経験を踏まえ、多くの日本国民は徹底した平和主義の憲法を今日まで保持して、戦争に巻き込まれずに生活をすることができました。日本国憲法の前文では、「われらとわれらの子孫のために」「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」「この憲法を確定する」「日本国民は、恒久の平和を念願し」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と規定され、第9条では戦争の放棄、そして2項で戦力の不保持、交戦権の否認を規定しました。
 日本国憲法の非武装平和の精神を具現化し、日本国憲法の崇高な理想を絵にかいたもちではなく、一歩一歩そこに近づくために無防備に徹し、地域から戦争をなくすことで住民の生命、財産を守ろうという考えが出てまいりました。
 戦争は、いつの時代にも住民にさまざまな被害をもたらします。歴史的に見ると、第一次世界大戦までは戦争の中の全死者の95%は軍人、5%が一般住民でした。ところが、第二次世界大戦では、一般住民の死亡率は48%にまで増大し、朝鮮戦争では84%、ベトナム戦争では95%と一般住民の犠牲がはね上がってしまいました。その後の湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争においても、この傾向は変わりません。
 最近の我が国の状況を、戦争前夜のような感じになってきたと言う年配者が少なくありません。イラクへの自衛隊派兵、改憲への政治日程の論議、日本経団連による武器輸出三原則の見直し論と、平和憲法体制が危機に瀕する状況になってきました。我が国が戦後一切の戦争と武力紛争に加担、介入せず、武器輸出もしないできたことが、アジア諸国、イスラム世界でも高く評価され、今まで友好的な関係が維持されてきました。しかし、米英軍の実質的な占領下のイラクへの自衛隊派兵は、アメリカからは歓迎されましたが、当のイラクを初め、かつて日本の侵略を受けたアジア諸国の受けとめは全く違うと考えなければなりません。
 私は、5月3日、憲法施行記念日の日に、隣の松戸の市民会館で九条の会アピールを出した9人の1人、作家の澤地久枝さんの話を聞きました。また、翌5月4日、これも隣ですが、船橋市民文化ホールで九条の会、千葉地方議員ネットの主催で九条の会の小田実さん、事務局長の小森陽一さんの話を聞きました。また、5月21日には、この市川の勤労福祉センターの分館で憲法と歩む市民の集いに参加して、アフガンで井戸を掘ったり医療活動を行っている医師、中村哲さんのお話を聞く機会を得ました。3つの集会の共通点は、どこも参加者が予定数を大幅に上回り、通路にまで人があふれてしまいました。今、多くの国民が日本の政治、社会状況にいら立ち、不安を感じながら平和を求める願いを強めているのでしょうか。また、講師の主張は、憲法9条の非武装の考え方は時代おくれではなく、今こそ旬であり、これからますます重要性を増すものであり、ある意味では最も現実的な選択であるという主張でした。
 私は、2月議会の代表質疑で、真の地方自治の確立のための課題について取り上げました。市長は、施政方針の中で市民本意の市政、地方自治体としての自主性を重視しながら、「地方が国を動かすという気構えのもと、新たな施策を打ち出し、市川から全国への発信も行ってまいりました」「国の政策や指導に頼ることなく、また」「地域の特性を踏まえ、地域で政策を立案しそれを実行する、自治体の存在意義はそこにある」と述べ、さらに「私は」――私はというのは市長です――「市民の福祉を向上させるために、地方が政策を先取りする、地方が国を動かしていくという気構えを持って、これからの市政運営に臨んでまいります」と述べられましたので、私は、日ごろから非常に意欲的で決断力もあって実行力も備えた市長が、地方自治を本物にしていこうという並々ならぬ決意のあらわれだと考え、その心意気を高く評価させていただきました。
 しかし、今回の平和無防備条例に対する市長の意見書を見ると、市民福祉を向上させるために地方が政策を先取りする、地方が国を動かしていくという気構えが感じられません。従来型の、ただ国の見解に従っているように見え、地方の自主性が響いてこないのですが、そう感じるのは私だけでしょうか。
 一方、政府は、ジュネーブ諸条約第Ⅰ追加議定書を批准したのだから、国際人道法であるジュネーブ条約の注釈は、ジュネーブ条約の発展の経緯から言っても、赤十字国際委員会が全世界に公表しているものに従うのは当然のことであり、各国政府が勝手な解釈をしていたら、条約の実効性はなくなってしまうのではないでしょうか。
 本条例の第1条に規定されているように、「日本国憲法の平和主義の理念、非核三原則、ジュネーブ条約等の国際人道法ならびに市川市の『核兵器廃絶平和都市宣言』に基づき『無防備地域宣言』を行い住民の平和と安全を保障することを目的」としていますが、このことは、自治体の最も重要な住民の安全、生命や財産の保護という任務と全く合致をしております。
 平和の大切さを否定する人はいませんが、その中で、本条例市川市平和無防備条例の制定を求める1万人以上の平和を願う市民の声を重く受けとめ、私が本条例に賛成する討論を終了いたします。ありがとうございました。(拍手)
○井上義勝議長 静粛にお願いいたします。
 これをもって討論を終結いたします。
 これより議案第1号を採決いたします。
 本案に対する委員長の報告は否決であります。本案を原案のとおり決することに賛成の方の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○井上義勝議長 起立者少数であります。よって本案は否決されました。


○井上義勝議長 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
午後5時45分散会

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