式場隆三郎

式場隆三郎(1898~1965)

式場隆三郎(しきばりゅうざぶろう)。精神科医、市川式場病院の創設者。1999(平成11)年、市川市名誉市民に選ばれる。

市川市立図書館の式場隆三郎著作の所蔵リストは以下よりご確認ください。

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1.文学と美術

式場隆三郎(スケッチ画像)

1898(明治31)年、新潟県中蒲原郡五泉町(いまの五泉市)に生まれる。1911年旧制村松中学に入学し、母方の叔父の影響で雑誌「ホトトギス」を知り文学に傾倒して、文芸誌、校友会誌の編集にあたった。やがて、旧制の新潟医学専門学校にすすむが、文学の道も捨てきれず、吉田璋也らと文化団体を結成、文芸雑誌を刊行した。そのころから「白樺派」の武者小路実篤、柳宗悦、志賀直哉らに師事、美術にも深い関心を寄せていた。美術に関してはいずれ、ゴッホやロートレック、ゴーギャンといったヨーロッパの画家たちを先駆けて紹介し、精神科医の立場から研究して伝記を書き上げるという偉業を果たすこととなる。また昭和二十年代後半には、国立西洋美術館の基となる松方コレクション日本復帰運動をはじめ、その建設に多大な貢献を果たす。

2.民芸運動へ傾倒

市民文庫の式場隆三郎氏コーナー

学校を卒業して、精神病理学の研究をすすめるかたわら、柳宗悦(やなぎむねよし)が提唱の民芸運動に参画してバーナード・リーチ、浜田庄司(はまだしょうじ)、千家元麿(せんげもとまろ)、河合寛次郎(かわいかんじろう)、寿岳文章(じゅがくぶんしょう)らと終生かわらぬ親交を重ねている。

1925(大正14)年に木喰仏の全国調査に参加、1929(昭和4)年には欧州視察にて、ヨーロッパ各地の美術や民芸を調査。その後も民芸関係で沖縄や北京などに赴いている。 民芸理論を実現させた建築についても語っており、1939(昭和14)年、式場病院構内に建てた自宅は、柳宗悦設計、浜田庄司建築監督によるものである。

3.市川との関わり

本業の医学に関しては、市川との関わりも深い。昭和11(1936)年市川市国府台に精神病院(式場病院)を開院、その経営にあたった。また八幡学園の顧問となり、そこで少年・山下清(やましたきよし)を知り、その作品を世に出した。特に昭和20~30年代は、同じ市川に住む建築家、岸田日出刀(きしだひでと)らとともに地域文化発展の主導者として活躍された。

4.出版事業の展開

1937(昭和12)年、実業之日本社刊行の『四十からの無病生活法』はベストセラーとなる。

1940(昭和15)年、鱒書房のコバルト叢書より『処女のこころ』『人妻の教養』も数年越しのベストセラーとなる。

戦後の昭和21(1946)年、日刊新聞「東京タイムズ」を創刊、出版ブームの先駆けとして東京タイムズ社内にロマンス社創立。娯楽雑誌「ロマンス」をはじめ「婦人世界」「映画スター」などの月刊雑誌を発刊。

1948(昭和23)年には日比谷出版社を創立、長崎の永井隆(ながいたかし)博士を知り、『長崎の鐘』などの出版に尽力した。

5.建築との関わり「二笑亭」

没後35年にして、式場隆三郎氏を再び世に知らしめたのは、1989(平成元)年、求竜堂から刊行された『二笑亭綺譚 五十年目の再訪』であった。 (筑摩書房より1993年文庫版でも刊行)

昭和のはじめ、深川門前仲町の一角に狂人が造ったという奇々怪々な屋敷「二笑亭」(にしょうてい)が実在した。『二笑亭綺譚』(昭森社 1939)は、式場隆三郎自らが精神科医の立場から取材した貴重なドキュメントである。取材には、建築家の立場として、谷口吉郎(たにぐちよしろう)氏も同行している。この当時の様子については、約40枚程の白黒写真から伺い知ることができる。昇れない梯子、使えない部屋、節穴にガラスを嵌めた覗き穴等々、常人では到底思いつかないような趣向の数々は、今で言うならば赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)氏が提唱していた「超芸術トマソン」の元祖と言えるだろう。さらに式場隆三郎の描写も丁寧かつ的確、その場で案内されているような臨場感にあふれており、ポスト・モダンを予見していた氏の先見性が伺える名作である。

平成版『二笑亭綺譚』では、隆三郎氏の元祖『二笑亭綺譚』を再録するほかに、隆三郎氏の息子・隆成氏による後年の調査記録をメインとして、藤森照信のエッセイ、赤瀬川原平の小説、岸武臣の復元模型写真が一緒に掲載されている。

関連リンク

日本近代文学館(式場隆三郎文庫)(別ウィンドウで開きます)

式場隆三郎所蔵リスト

A.美術関連の著作リスト

A-1 ファン・ホッホの生涯と精神病 上・下巻 聚樂社叢書 1932
A-2 ファン・ホッホ兄弟の生涯(「日本医事新報」666-668) 日本医事新報社 1935(市川市図書館所蔵なし)
A-3 印象派画家の手紙(ポオル・ガツシヱ/編) 耕進社 1935
A-4 ヴァン・ゴオホ 美術発行所 1939(市川市図書館所蔵なし)
A-5 焔と色 小説ヴァン・ゴッホの生涯(ステフアン・ポラチェック/著) 牧野書店 1941
A-6 光の信者 -小説レムブラント-(テウーン・デ・ヴリース/作) 冬至書林 1942
A-7 ロートレック 二見書房 1942
A-8 夜の向日葵 -テオ・ファン・ホッホの手紙- 畝傍書房 1942
A-9 ヴァン・ゴッホの生涯 東京堂 1943
A-10 ゴッホの素描 アトリエ社 1943
A-11 宿命の藝術 昭和書房 1943
A-12 ヴァン・ゴッホ自叙伝 1巻:若き日の悩み(ヴァン・ゴッホ/〔著〕) 昭和書房 1946
A-13 ヴァン・ゴッホ自叙伝 2巻:芸術の戦(ヴァン・ゴッホ/〔著〕) 昭和書房 1947
A-14 焔と色 ヴァン・ゴッホの生涯 上・下巻(ステフアン・ポラチェック/著) 乾元社 1947
A-15 ヴァン・ゴッホ[千人文庫第二巻] 建設社 1947
A-16 ビアズレイの生涯と芸術 建設社 1948
A-17 焔と色[改訂合本] 乾元社 1949
A-18 ゴヤ -生涯と芸術- 山雅房 1950
A-19 ヴァン・ゴッホ 雄鶏社 1951(市川市図書館所蔵なし)
A-20 人生への情熱 若きゴッホ 上・下巻(アーヴィング・ストーン/著) 三笠書房 1951(市川市図書館所蔵なし)
A-21 ゴッホの手紙 -弟テオドルへの手紙- 全4巻 創芸社 1951-52
A-22 ムーラン・ルージュ ロートレックの生涯 新潮社 1953
A-23 テオ・ヴァン・ゴッホの手紙 -兄ヴィンセントへの手紙- 創芸社 1952
A-24 ある芸術家への手紙 三笠書房 1952
A-25 ゴッホ 全3巻 [大判画集] 美術出版社 1953
A-26 美わしき野性 ゴーガンの私記 新潮社 1953
A-27 ゴッホ巡礼 学風書院 1953
A-28 ヴァン・ゴッホ Vincent van Gogh 新潮社 1954
A-29 ゴッホ友の会 会誌1~3 日本ヴァン・ゴッホ友の会 1953-54(市川市図書館所蔵なし)
A-30 松方氏旧蔵コレクション国立美術館建設のためのVan Gogh Exhibition解説目録 丸善 1954(市川市図書館所蔵なし)
A-31 GOGH [大判画集三巻の合本] 美術出版社 1954(市川市図書館所蔵なし)
A-32 ヴァン・ゴッホ名作選 東京タイムズ社 1955(市川市図書館所蔵なし)
A-33 美術の裏窓 鱒書房 1955
A-34 絵画療法(エイドリアン・ヒル/著) 美術出版社 1955(市川市図書館所蔵なし)
A-35 炎の自画像ゴッホ 新潮社 1955
A-36 炎と色 小説ヴァン・ゴッホの一生 現代社 1955
A-37 炎の人・ゴッホ 上・下巻(アーヴィング・ストーン/作 1951年の改訳) 三笠書房 1956
A-38 ゴッホの手紙 全4巻 創芸社 1956
A-39 ヴァン・ゴッホの耳切事件 四季社 1957
A-40 ヴァン・ゴッホの世界 -その生涯と作品研究-(カール・ノルデンファルク/[著]) 白揚社 1957
A-41 ゴッホの百年 美術出版社 1957
A-42 母への手紙 [えぞ豆本第18号] 北海道豆本の会 1957
A-43 現代伝記全集 第30巻 ロートレック 日本書房 1959(市川市図書館所蔵なし)
A-44 現代伝記全集 第7巻 ヴァン・ゴッホ 日本書房 1960
A-45 世界名画全集 続第10巻 ヴァン・ゴッホ 平凡社 1961(市川市図書館所蔵なし)
A-46 少年少女世界伝記全集 第10巻(諸国編) ゴッホ 講談社 1961(市川市図書館所蔵なし)
A-47 ゴッホ物語(講談社版「少年少女世界伝記全集」第10巻の別刷著者私家本) 金剛社(造本) 1962
A-48 炎の画家ゴッホ [角川文庫] 角川書店 1965
A-49 世界の人間像 第18巻 ヴァン・ゴッホの世界 角川書店 1965(市川市図書館所蔵なし)
A-50 美術の招待状 愛と苦悩の放浪画家たち 文化開発社 1978
A-51 炎の画家ゴッホ 全4冊 式場隆三郎選集 ノーベル書房 1981
A-52 ゴッホ ほのおの画家 (講談社火の鳥伝記文庫35) 講談社 1982 

Y.山下清関連の著作リスト

Y-1 絵画療法(エイドリアン・ヒル/著) 美術出版社 1955(市川市図書館所蔵なし)
Y-2 「美術手帖」臨時増刊 ちえのおくれた子らの作品(落穂寮) 美術出版社 1955
Y-3 はだかの王様 山下清の絵と日記 現代社 1956
Y-4 山下清画集(山下清/〔画〕 式場隆三郎/編) 新潮社 1955
Y-5 山下清作品集(山下清/〔画〕 式場隆三郎/編) 栗原書房 1956 、1958増補
Y-6 放浪日記(山下清/〔著〕 式場隆三郎,渡辺実/編) 現代社 1956 、1958改版
Y-7 日本ぶらりぶらり(山下清/〔著〕 式場隆三郎/編) 文芸春秋新社 1958
Y-8 はだかの大将 山下清の絵と日記(「はだかの王様」改訂版) 現代社 1958(市川市図書館所蔵なし)
Y-9 山下清・日本の風物(山下清/〔画〕 式場隆三郎/作品解説・編) 東峰書院 1961

M.民芸運動関連の著作リスト

M-1 バーナード・リーチ(式場隆三郎/編) 建設社 1934
M-2 琉球の文化 [民藝叢書 第二篇](式場隆三郎/編) 昭和書房 1941(市川市図書館所蔵なし)
M-3 『工芸』107号 アイヌ書誌 日本民芸協会 1942(市川市図書館所蔵なし)
M-4 民芸と生活 北光書房 1943
M-5 諸国の民芸 大日本雄弁会講談社 1947
M-6 『民芸手帖』93: 式場隆三郎追悼号 1966(市川市図書館所蔵なし)
M-7 アイヌ書誌[復刻アイヌ史資料集 補巻(辞典・書誌編)] 北海道出版企画センター 1980(市川市図書館所蔵なし)
M-8 琉球の文化 復刻版(式場隆三郎/編) 榕樹社 1995

B.健康医療および一般教養書などの著作リスト

B-1 青春生理読本 (中央公論別冊附録) 中央公論社 1934
B-2 文学的診療簿  人文書院 1935(市川市図書館所蔵なし)
B-3 心理解剖室 医学随筆 サイレン社 1936
B-4 処女に与ふ [性教育叢書] 建設社 1936
B-5 妄談神経 随筆 南光社 1936
B-6 四十からの無病生活法  実業之日本社 1937
B-7 女のこころ女のからだ  ユマニテ書園 1937
B-8 マルキ・ド・サド (訳本 オットー・フラアケ/著) 昭森社 1937
B-9 精神病理学  三笠書房 1937(市川市図書館所蔵なし)
B-10 絶対安眠法  中央公論社 1937
B-11 健康新道  日進医学社 1938
B-12 自然療法  人文書院 1938
B-13 結婚秘典 (主婦之友新年号附録) 主婦之友社 1938
B-14 銃後の保健と職業病 ダイヤモンド社 1938(市川市図書館所蔵なし)
B-15 毛髪と寿命  作品社 1938
B-16 二笑亭綺譚 昭森社 1939(市川市図書館所蔵なし)
B-17 血液の審判 中央公論社 1939
B-18 知識人の為の頭脳強健法 三笠書房 1939
B-19 天才の発見-最新精神医学のレンズを通してみた天賦能力の発現法- 山雅房 1939
B-20 脳室反射鏡  高見沢木版社 1939
B-21 科学的頭脳明快法 東亜薬化学研究所 1939(市川市図書館所蔵なし)
B-22 脳力集中法及休養法講義 白揚社 1939(市川市図書館所蔵なし)
B-23 望郷歌 癩文学集 山雅房 1939(市川市図書館所蔵なし)
B-24 人妻の教養 鱒書房 1940
B-25 赤門綺譚 医学小説集 山雅房 1939
B-26 微笑亭夜話 牧野書房 1940
B-27 神経物語 (訳本 E・M・オーミストン/著] 日新書院 1942 
B-28 こころの聲  昭和刊行会 1943
B-29 戦争と脳 牧書房 1943
B-30 若き女性の医学  文松堂書店 1944
B-31 処女のこころ コバルト社 1945
B-32 俘虜の心理  綜合出版社 1946
B-33 夜想 (東條英機の精神鑑定 ほか) 大元社 1946
B-34 結婚の饗宴  コバルト社 1946
B-35 サド候爵夫人  昭和書房 1947
B-36 サンガー夫人伝と産児調節展望 大元社 1947
B-37 すべての母が知っておかねばならないこと 新星社 1947
B-38 妻の心理学 コバルト社 1947
B-39 新しい愛情の設計  昭和書房 1947
B-40 肉体の火山 山雅房 1947
B-41 愛の異教徒 マルキ・ド・サドの生涯と藝術 綜合出版社 1947
B-42 文学的診療簿 かに書房 1947
B-43 愛の辞典 かに書房 1947
B-44 女の謎  ダイヤモンド社 1947(市川市図書館所蔵なし)
B-45 天才の発見  山雅房 1947
B-46 恋愛と結婚  コンサイスライブラリー 1947
B-47 すべての娘が知っておかねばならないこと 新星社 1947
B-48 すべての青年が知っておかねばならないこと 新星社 1947
B-49 新女性ノート  セントラルパブリッシング 1948
B-50 新しい生活の設計  旺文社 1948(市川市図書館所蔵なし)
B-51 恋愛新書 (真杉静枝との共著) 銀座出版社 1948(市川市図書館所蔵なし)
B-52 美しき本能  青々堂出版部 1949
B-53 学生と性教育 (西村伊作との共著) 建設社 1949(市川市図書館所蔵なし)
B-54 完全なる恋愛 文潮社 1949(市川市図書館所蔵なし)
B-55 サド候爵夫人 定本 うらら社 1949
B-56 独身者の性生活  日比谷出版社 1949(市川市図書館所蔵なし)
B-57 地上楽園  山雅房 1950
B-58 定本サド侯爵夫人 [限定特製本] 山雅房 1950(市川市図書館所蔵なし)
B-59 脳力集中法と休養法十二講  白揚社 1951
B-60 医学人生案内 東京社会保険協会 1951(市川市図書館所蔵なし)
B-61 健康と人生 東南書房 1952
B-62 天才の発見  クラルテ社 1952
B-63 若い女性、結婚への探求  ことぶき出版社 1955(市川市図書館所蔵なし)
B-64 脳力集中法と休養法十二講 改訂新版 白揚社 1955(市川市図書館所蔵なし)
B-65 若い世代人生ノート ことぶき出版社 1955
B-66 結婚への招待  鱒書房 1956(市川市図書館所蔵なし)
B-67 出頭没頭  現代社 1956
B-68 天才の発見 鱒書房 1956 (市川市図書館所蔵なし)
B-69 式場病院新築記念帳 [国際建築増補] 式場病院 1957(市川市図書館所蔵なし)
B-70 日本の精神病院 [論文集の編者として] 日本精神病院協会 1958(市川市図書館所蔵なし)
B-71 重役病 巌松堂 1958(市川市図書館所蔵なし)
B-72 健康の条件 医学出版社 1960
B-73 結婚の饗宴  潮文社 1960(市川市図書館所蔵なし)
B-74 洗濯療法  オリオン社 1960
B-75 無病生活法 実業之日本社 1960
B-76 ゆかり 日本医家芸術クラブ10周年記念文集 日本医家芸術クラブ 1963
B-77 二笑亭綺譚 決定版 今野書房 1965

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