流れついたおひめさま

市川市の中山から、北の方へ行くと、奉免(ほうめん)という所があります。むかしは、このあたりまで海がはいりこんでいました。
今から七百年ぐらい前のことです。この浜べに一そうの小舟がただよい着きました。ちょうど浜に出ていた村人がみつけました。
「あの舟はなんだ。」
「どうも見かけん舟だが。」
「あれ、人がのっているぞ。」
「魚つりに出て、流されたんだろうな。」
「いや、ことによると・・・・・・・。」
「ことによる、なんだよ。」
「うん、ことによると、どこかの罪人が逃げてきたのかもしれないぞ。」
みんなは、何者だろうかかと、遠まきにしてみまもりました。ところが、小舟から浜べにおり立ったのは二人の女の人でした。
ひとりは、美しい着物を着た、若そうな人です。頭からすっぽりとうすぎぬでおおっているので、顔だちはわかりませんが、うすぎぬから出ている長い黒かみ、かがやくばかりです。どこかのおひめさまのようです。
もうひとりは老女で、きっと、うばなのでしょう。おひめさまらしい人のはき物をはかせてあげたり、手をとって砂浜を歩かせてあげたりしています。
「なんだか、みたこともないきれいな着物だなあ。」
「女二人とは変だなあ。」
「なにしにきたんだろう。」
「みやこの人だろうか。」
人びとは、このあたりにみかけない女の人だと、不思議に思いました。
やがて、この二人は、流れついた岸べの近くに住むようになりました。
(中略)
家の中からは、びわを鳴らす音が聞こえてきます。村人は、びわの音に合わせて歌う歌のものがなしさに、耳をかたむけて聞きほれていました。
しばらくたって、村人がしげったはぎをかきわけながら、えんがわ近くに進みよったところ、びわの音が、はたとやみました。
「あのう、大根など持ってまいりましたが。」
村人の声に、家の中できぬずれの音がしておひめさまが出てこられました。
おひめさまは、うすぎぬをかぶっていらっしゃいましたが、そのすけて見えたお顔を見て村人は
「あっ。」
と声をあげました。そして野菜をほうりなげるようにおくと、そのまま逃げるようにしてそとにとび出したのです。
(中略)
鎌倉の役人が調査したところ、この女の方こそ、後深草天皇のおひめさまである「常磐井の宮」であることがわかりました。
常磐井の宮は、・・・
(省略)
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