「本のほかほかだより」5号~9号

第9号 赤ちゃんにとって絵本とは

絵本をよむくまくん(イラスト)

最近は、赤ちゃんにも絵本をという動きが盛んで、図書館でも年々赤ちゃんの姿がふえています。では、赤ちゃんにとって絵本とはどんなものなのでしょう。

赤ちゃんにとって一番大切なのは、親や身近な人からの愛情をいっぱいに受けることでしょう。体を使った遊び、わらべうた等、お母さんやお父さんと一緒に楽しみ、その温かさに触れることです。赤ちゃん時代の絵本は、そんな親子のコミュニケーションの一つです。赤ちゃんにとってみれば自分の手にも扱いやすい本が近くにあり、色がきれいだったり、知っているものが描かれている。だから本能的に手に取るということもあるかもしれません。そんな出会いも、ある日、お母さんの声や行動によって特別な意味をもつものに変化する、という発展をします。絵本というものがあると、大好きなお母さんやお父さんの声がときには優しく、時にリズミカルに心地よく響き、きれいな色の絵が楽しそうにこちらに向かっている。赤ちゃんが絵本にたいして好意を抱く大きな一歩です。そこから徐々に絵本の中に自分の知っているものを発見して喜び、主人公を認知し、ストーリーのあるお話も理解できるようになっていきます。

絵本が赤ちゃんにとって良いものとなるには必ず大人の存在が必要です。大人の温もりと愛情があってこそ、絵本は生き生きと動き出すのです。

あっこちゃんのひとこと

絵本は決して早期教育の手立てではありません。字や数を覚えるよりもっと大切な豊かなものを与えてくれるのです。お母さんやお父さんと体をつかって遊んだり、歌を歌ったり、散歩をしたりということが十分になされることで、大人への、ひいては人間への信頼が生まれてくるのでしょう。

赤ちゃん時代の絵本は、そこへ到達するための道具の一つといっても過言ではないとおもいます。

第8号 絵本選びのポイント3

今までにも何回か説明してきましたが、すぐれた絵本の絵はひとつの芸術作品です。一枚の絵の中に、画家の想いや主張が凝縮されています。ちょっと見たところ大人受けがよくないように見える絵本でも、子どもは大好きというものがありますね。そんな絵をじっくり見ていると、なるほど、ただ大胆で乱暴なのではなく、生命の激しさがほとばしりでていると感じることができたり、発想の自由さを知ったりすることがあります。また、非常に地味な絵本に空想をより広げられることもあるでしょう。そんな絵本が私達に向けて発しているメッセージやエネルギーを、子どもは大人より敏感に感じているのかもしれません。

もう一つ、絵本選びで注意したいのが、「子どものために出版されているのか」という点です。近頃は、“絵本は子どものためのもの”という視点からではなく“大人が見てきれいなもの”、“癒されるもの”という視点から出版されているものも多くなっています。確かに大人が見ると、きれいだったりちょっとひねったユーモアが入っていたりして気になる本が多いように思います。でも、子どもに手渡す前にその世界やユーモアが子どもに理解できるのかをよく考えてみましょう。

あっこちゃんのQ&A

質問

忙しい時でも、必ず最後まで読み通さなければいけないと思うとちょっとしり込みしてしまうのですが。

回答

確かに絵本は、1冊丸ごと表表紙から裏表紙までが一つの作品となっています。ですからその作品の世界を手渡すのには、読み通したほうがいいと言えます。でも、基本的に本は楽しむもの。少しくらい脱線したり、次の日にまたがったりしても親子で楽しい世界を堪能できれば良いのではないでしょうか。親子でなければ出来ない楽しみ方だってきっとあるはずです。

第7号 絵本選びのポイント2

前回、絵本選びのポイントとして、絵がお話を語っているかということを説明しました。

さて、絵自体も素晴らしく、しっかりお話を語っている絵本があったとします。そこに絵にはまったくそぐわない言葉がついていたらどうでしょう。温かさをもたらしてくれるような絵に威勢のいい言葉とか、奥の深い絵にかわいらしい言葉とか・・・。どうにもいごごちの悪い気がします。絵本は、絵のイメージをより広げてくれる言葉に出会った時、その世界を数倍に広げることができるのです。

たとえば、「おおきなかぶ」佐藤忠良/画(福音館書店発行)の絵本をみてみましょう。この絵本は、絵がしっかりお話を語ってくれる非常にすぐれた絵本で、40年も愛されています。この中のかぶが出来た場面ですが(5ページ)、画面に入りきらないとても大きなかぶが描かれています。これだけでもかぶが大きいということはよくわかりますが、そこにはこんな言葉がそえられています。「あまい げんきのよい とてつもなく 大きいかぶができました。」どうでしょう。かぶが、ただ大きいというよりもっと大きなもので、よく育ってずっしりとした、そしておいしい味をもったものという感じがし、実体を感じることができるのではないでしょうか。

また、絵とお話のバランスも大切です。お話はまだ前の場面なのに絵だけが次の場面にいってしまったらどうでしょう。お話の先がみえてしまい、クライマックスであるはずのところが台無し・・・ということもあります。逆に、お話だけが先へいってしまい、絵がお話についていかないということもあるでしょう。すぐれた絵本では絵とお話はバランスよく組み立てられ、お互いに相手を引き立てながらお話をすすめていきます。絵本を選ぶときは、この絵と文章の関係についても注意を払ってみるといいでしょう。

第6号 絵本選びのポイント1

おはなしのおねえさん(イラスト)

絵本は絵がポイントです。

絵でお話の筋がわかるということが、絵本選びの重要なポイントになります。絵だけをみながらお話のだいたいの筋がわかるでしょうか。すぐれた絵本といわれるものは、絵がお話を語っていて、絵を見るだけで楽しめるといわれています。そういう絵は、子どもに媚びることなく、生き生きとそしてきちんと描かれています。時には、子どもには理解できないのでは?と思うような絵もあるかもしれません。でもこれは、きめられた枠やページの中で、画家が自分の持てる能力や想いをかけてそのお話の魅力を伝えるためにじっくり描き上げた、いわば芸術作品なのです。そして子ども達の心はそういう画家の熱い想いを感じ取り、受け入れることの出来る敏感さと柔軟さをもっていると思います。

すぐれた芸術作品に触れることは、その子の感性を磨き、本物を見分ける力も養ってくれるものです。

あっこちゃんのQ&A

質問

読んでいる途中に飽きてしまいますが・・・

回答

本を読んでいる最中に、「これ何?これ何?」と質問してくる子には、やはりその子の要求を一旦受け止めて相手をしてやり、満足させてあげるのがよいでしょう。本を読み通すことだけに執着してしまうと、本を読んでもらうことは、窮屈だと感じてしまうかもしれません。一度脱線しても、また続きを読んで本の世界に戻るということを繰り返せば、だんだん最後まで聞けるようになっていきます。焦らずに続けていきましょう。

また、次々本を変えて持ってくる子は、本を読むより、親とのやり取りを求め、自分を認めてほしいと訴えているのかもしれません。そんな時は、とことんつきあって子どもの心を安定させてあげるほうが、大切だと思います。何と言っても、読み聞かせの根本にあるのは、“愛情”なのですから。

第5号 絵本の選び方

イラスト(あっこちゃん)

絵本は、文字通り絵が主役の本です。絵と文が一体となってひとつの作品になっています。この、絵本という特殊性によって本選びにもいくつかのポイントがでてきます。主なポイントを上げてみましょう。

  • 絵を見てお話の筋がわかること
  • 絵と文のバランスがとれていること
  • 絵がひとつの作品としてすぐれていること
  • 子供のために出版されたものであること

このような点を頭にいれて、まず本を手にしたら、その本が子どもにとってどう見えるか考えましょう。子どもは字を追ってはいきません。絵と、耳から入る言葉で絵本を楽しみます。読み手も、子供と同じ状態に身をおいてみるとわかりやすいと思います。

次回からはこのポイントについて詳しく説明していきます。

あっこちゃんのQ&A

質問

よい本ってなんですか。大人の押し付けでは?

回答

図書館でよく使う「よい本」とは、子どもが本当に楽しいと感じる本、成長したときに心に深く残っているような本のことを指しています。

それは、大人が決めて押し付けているのではなく、子ども達の手によって長い年月をかけてたくさんの本の中から選ばれ、生き残ってきたものです。お母さん方も、図書館で「ぐりとぐら」や「エルマーのぼうけん」等を発見し、懐かしいと思ったことはありませんか。お母さん達も、子ども時代にその本を読んで感激したことで、その本の命を延ばしてきたのです。こんな風にお母さん、そのまたお母さんと、代々の子ども達が読むことによって選んできたものです。

よい本という感覚ではなく、選ばれてきた本という感覚の方がより近い言い方かもしれません。

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